星状神経節近傍への経皮的キセノン光照射が四肢末梢皮膚温に与える影響

DOI
  • 吉田 英樹
    弘前大学大学院保健学研究科保健学専攻健康支援科学領域障害保健学分野
  • 永田 順也
    函館五稜郭病院リハビリテーション科
  • 傳法谷 敏光
    弘前大学医学部保健学科理学療法学専攻

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抄録

【目的】本研究の目的は、星状神経節(SG)近傍への経皮的キセノン光照射(Xe照射)が四肢末梢皮膚温に与える影響について検討することであった。<BR>【方法】同意の得られた健常例30名に対して、以下の二つの実験を実施した。実験1:15分間の安静仰臥位での順化後に、安静仰臥位のまま両側のSG近傍へのXe照射(SG-Xe照射)を10分間実施した。実験2:前述の順化後に、Xe照射を伴わない安静仰臥位を10分間保持した(コントロール)。測定項目として、四肢末梢皮膚温は、測定部位を上下肢ともに第3指遠位指節間関節腹側中央とし、放射温度計を用いて順化中は3分毎、SG-Xe照射中及びコントロール中は1分毎に測定した。また、心拍数は、R-R間隔測定が可能な心拍計を用いて、実験開始から終了まで連続測定した。四肢末梢皮膚温の解析では、各実験における対象者の順化中の上下肢ごとの末梢皮膚温平均値を基準値として、SG-Xe照射中及びコントロール中の1分毎の上下肢末梢皮膚温について基準値からの変化量を算出した。心拍数の解析では、R-R間隔の周波数解析を実施し、低周波成分(LF)と高周波成分(HF)のパワースペクトルを求め、HFを副交感神経活動、LF/HFを交感神経活動の指標として用いた。<BR>【結果】心拍数の解析では、実験1では順化終了時と比較してSG-Xe照射終了時のHFの有意な増加及びLF/HFの有意な減少を認めたが、実験2では順化終了時とコントロール終了時との間でHF及びLF/HFの明らかな変化を認めなかった。上肢末梢皮膚温の解析では、SG-Xe照射中を通して上肢末梢皮膚温が基準値を下回らない傾向を示したが、コントロール中は開始5分以降に上肢末梢皮膚温が基準値を下回る傾向を示した。上肢末梢皮膚温の基準値からの変化量については、SG-Xe照射及びコントロール開始7~10分後での各条件間の変化量に有意差を認め、全体としてSG-Xe照射中の後半の上肢末梢皮膚温がコントロール中の後半のそれを上回る傾向を示した。下肢末梢皮膚温の解析では、SG-Xe照射中は開始1分以降、コントロール中は開始4分以降に下肢末梢皮膚温が基準値を下回る傾向を示した。下肢末梢皮膚温の基準値からの変化量については、SG-Xe照射及びコントロール開始7~9分後を除く全ての測定点で各条件間の変化量に有意差を認め、全体としてSG-Xe照射中の下肢末梢皮膚温がコントロール中のそれを下回る傾向を示した。<BR>【考察】R-R間隔の周波数解析結果は、SG-Xe照射が交感神経活動を抑制することを示唆している。さらに、星状神経節を発する節後ニューロンの分布を考慮すると、コントロール中と比較したSG-Xe照射中の上肢末梢皮膚温の上昇傾向は、SG-Xe照射による上肢末梢血管拡張に伴う上肢循環血液量増加が基盤にあると考えられる。一方、コントロール中と比較したSG-Xe照射中の下肢末梢皮膚温の低下傾向は、SG-Xe照射による上肢循環血液量増加に伴う下肢循環血液量の相対的な減少に基づくのではないかと推察される。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), F0189-F0189, 2008

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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