タケ類天狗巣病による西日本の竹林の衰退

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タイトル別名
  • Current status of bamboo die back caused by the destructive disease "witches'- broom of bamboo" in western Japan
  • タケルイ テング ソウビョウ ニ ヨル ニシニホン ノ チクリン ノ スイタイ

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抄録

タケ類天狗巣病は、麦角菌科の一種Aciculosporium take Miyakeの感染によって生じるタケ類を枯死に至らしめる病気で、日本国内では野外においてマダケおよびモウソウチクを含む6属19種8変種8品種2園芸品種のタケ類、ササ類で感染することが確認されており、近年では国内各地で本病による竹林の枯損被害が報告されている。本研究は、兵庫県以西の西日本一帯を中心とした地域において、マダケ群落およびモウソウチク群落のタケ類天狗巣病による枯損の現状を明らかにし、天狗巣病の影響による今後の竹林の動態を考察することを目的とした。西日本の17県および新潟県、宮城県、静岡県の3県において、本病によるマダケ群落およびモウソウチク群落の枯損状況を調査した結果、西日本におけるマダケ群落における本病発症率は全体では93.2%、各県では75%以上と高い水準であったほか、本病による重度枯損林分は10県で確認された。一方、モウソウチク群落における本病発症率は、西日本全体では3.9%、発症率10%未満の県が15県(うち6県が0%)と極めて低い水準で、重度枯損林分も島根県で1ヵ所確認されたのみと被害の程度は低かったが、参考調査地の静岡県においては発症率が50%と高かった。これらのことから、本病は、(1)西日本各地でマダケ群落を枯損に至らしめる可能性のある病気であり、ほとんどのマダケ群落で発症していること、(2)西日本ではモウソウチク群落を枯死させることはまれな病気であり発症率も低いが、局所的に発症率の高い地域もみられることが明らかとなった。また、今後はマダケ群落の発症林分における病徴が進行し国内の広い範囲でマダケ群落の枯損林分が増加すると予想されたが、モウソウチク群落については発症林分や枯死林分の事例が少ないことから今後の動向についての予測は難しくモニタリングにより明らかにする必要があると考えられた。

収録刊行物

  • 保全生態学研究

    保全生態学研究 13 (2), 151-160, 2008

    一般社団法人 日本生態学会

被引用文献 (4)*注記

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参考文献 (40)*注記

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