質屋対策立法の展開(4・完) On the Pawnbrokers Act in Japan, 1868-1945(4)

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抄録

以上,明治維新以降昭和10年前後にいたる質屋対策立法の変遷過程について素描してきた。ここで確認できた諸問題について要約しておきたい。第1に,私営質屋業の展開をチェックする要因として金融諸機関(銀行,信用組合,公益質屋など),官庁,大企業を中心とする共済組合や健康保険組合制度の普及,労働者階級の実質賃金の上昇などを挙げることができるが,苛酷な質屋取締立法もまたその1つであった。第2に,この質屋取締立法の性格は,従来しばしば指摘されてきた行政府の犯罪捜査の利便のためだけでなく,日本資本主義の後進性に規定された社会問題の早期発生と独占資本の形成・確立期における社会問題の深化の態様に照応しながら徐々に変化している。そしてこの変化は,開明的官僚たちの社会政策的理念の予防先行的な導入によって開始され次第に現実的基盤をえたが,一方これに対する私営質屋業者の熾烈な反対運動によって著しく歪曲されたのである。すなわち欧米の自由主義の導入=幕藩体制下の質屋立法の緩和(「古着古金類等渡世之者取締規則」,「八品商取締規則」の制定<明治初年〜同13年>)→原蓄諸政策の強行・農業問題の発生=質屋撲滅論の台頭(「八品商取締規則」の改正,「質屋取締条例」の公布<同14年〜同18年>)→産業資本確立期における社会問題の断続的発生=官僚の社会政策的理念の導入と自由化を要求する私営質屋業者との対立(「質屋取締法」の公布<同28年>)→独占資本形成期における社会問題の本格的・重層的発生=官僚と私営質屋業者の対立激化(社会政策的な質屋取締法の改正法案の作成と挫折<明治末〜大正9年>)→独占資本確立期における社会問題の深化=両者の対立と妥協・質屋の公私併立主義の容認(「公益質屋法」の公布とその拡充・強化<昭和2年〜同10年>)がそれである。第3に,わが国における質屋対策の限界は,結局わが国資本主義の後進性に規定された質屋業の存立基盤の広汎かつ強固な残存,および労働運動の脆弱さにもとづく社会政策の貧困に求めることができよう。質屋の公私併立主義の採用こそ,正にその象徴的な帰結なのである。

収録刊行物

  • 駒沢大学経済学論集

    駒沢大学経済学論集 5(2), 36-56, 1973-09

    駒澤大学

各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    110007015984
  • NII書誌ID(NCID)
    AN00093494
  • 本文言語コード
    JPN
  • 雑誌種別
    大学紀要
  • ISSN
    03899853
  • NDL 記事登録ID
    405618
  • NDL 雑誌分類
    ZD11(経済--経済学)
  • NDL 請求記号
    Z3-952
  • データ提供元
    NDL  NII-ELS 
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