実験的口蓋床による局部加圧が唾液中コルチゾール濃度およびα-アミラーゼ活性値に及ぼす影響

書誌事項

タイトル別名
  • Effect of localized pressure under an experimental acrylic plate covering the palatal mucosa on the concentration of salivary cortisol and salivary α-amylase activity
  • ジッケンテキ コウガイショウ ニ ヨル キョクブ カアツ ガ ダエキ チュウ コルチゾール ノウド オヨビ アルファ アミラーゼ カッセイチ ニ オヨボス エイキョウ

この論文をさがす

抄録

日常臨床において義歯を装着した患者が,粘膜部の疼痛を訴えることがよくある.しかし,不適合義歯がどの程度,患者にストレスとなっているかの具体的指標はない.そこで健常者に実験的口蓋床を用いて口蓋粘膜の局所に圧刺激を与え,その時の唾液中のコルチゾール濃度とα-アミラーゼの活性変動を測定することにより,口蓋粘膜への不快刺激によるストレス反応を客観的に評価することを目的とした.被験者は,健常有歯顎者(男性6名,女性7名;平均年齢26.4±1.8歳)とした.実験は,口蓋床装着(以下D),局所加圧プレートを付与した口蓋床装着(以下DP)および口蓋床非装着(以下N)をランダムな順で各20分間装着させ唾液を採取した.局所加圧プレートは正中口蓋縫合線と左右第一大臼歯の近心頬側咬頭間線が交叉する点に直径2.5mm,厚さ0.5mmのアクリル板を口蓋床の内面に接着した.実験の前後に不安状態を測定できるSTAIを記入させた.各条件の終了後に疼痛および違和感についてのVASをDPおよびDの条件で記入させた.得られた唾液サンプルは,コルチゾールおよびα-アミラーゼ専用の分析キットを用いて測定した.測定結果を比較検討した結果,コルチゾール濃度およびα-アミラーゼ活性値は,DとNとの間には有意差はみられなかったがDPはNおよびDに比べ有意に増加していた(p<0.01).コルチゾール濃度,α-アミラーゼ活性値および,それぞれの増加の程度を表すDP/D比をそれぞれ求め,STAIおよびVASとの関係を調べた.α-アミラーゼとSTAI特性不安との間(r=0.658,p<0.05)およびα-アミラーゼのDP/D比と疼痛のVASとの間(r=0.603,p<0.05)に正の相関がみられた.以上の結果から,口蓋粘膜への局所圧刺激はコルチゾール濃度およびα-アミラーゼ活性値を上昇させることが明らかとなった.また,疼痛などの不快感を伴う不適合義歯は患者にとってストレッサとなることが示唆された.さらに不安傾向にある者は,不安傾向にない者と比較して,同程度の口蓋部への刺激でも,よりストレスを生じやすい可能性が示唆された.

収録刊行物

  • 歯科医学

    歯科医学 72 (1), 1-8, 2009

    大阪歯科学会

被引用文献 (4)*注記

もっと見る

参考文献 (40)*注記

もっと見る

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ