東南アジアのAlcis pammicra,A. maculata(シャクガ科,エダシャク亜科)とそれぞれの近縁種に関する知見と3新種の記載

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  • Notes on Alcis pammicra (Prout), A. maculata (Moore) (Geometridae, Ennominae) and their allies from Southeast Asia, with descriptions of three new species

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抄録

Alcis属は日本を含む旧北区から東洋区に分布する大属であり,東南アジアに限っても多くの種が知られている.しかし,他属に移すべき種の問題や,種レベルの分類の混乱もあり,今後広範な再検討が必要な属である.本報では,A.pammicra(Prout)とA.maculata(Moore)とそれぞれに近縁の種群について分類学的な再検討をおこなった.得られた主要な知見は次の通りである.Alcis pammicra-complex マレー半島からボルネオ,スマトラにかけてpammicraに外観の類似した種が分布しており,同定に混乱が見られたが,1種はフィリピン(ルソン)から記載されたeupithecioides(West)であり,もう1種は新種であることがわかりmanfredi Sato(スマトラ,ジャワ)と命名記載した.そのほか,A.polysticta(Hampson)(新結合),A.aagostigma(Prout)(ベトナムから初記録)を取り上げた.Alcis maculata-complex 黄色と黒の網目状の斑紋が特徴的な種群である.A.maculata(Moore)は,インドから記載された種であるが,その後negans(ボルネオ),prodictyota(中国),taiwanica(台湾)の3亜種が分離されている.亜種の問題については,地理的変異に加え個体による変異の幅も大きいので,種への昇格の可能性も含め,今後さらに研究が必要である.また,ルソンから記載されたA.nigrolineata(Wileman&South)は,♂交尾器の形態がAlcis属としては異質で,むしろArichanna属との関連を示唆しているように思える.しかし,Arichannaも大きな属で,いくつかの亜属への分割が試みられてはいるが,まだ安定したものではない.この種をすんなりと帰属させられる亜属はない.このような状況から,本報では暫定的にこれまで通りAlcis属に置くことにした.なお,maculataに似るが明らかに小型で雌雄交尾器も異なるmicromaculata Sato(スマトラ)と,A.herbuloti Orhantに近縁だが外観と雄交尾器が異なるbornemaculata Sato(ボルネオ)を新種として記載した.その他,A.nigrifasciata(Warren)(スラウェシから初記録)を取り上げた.

収録刊行物

  • 蝶と蛾

    蝶と蛾 56 (1), 19-30, 2005

    日本鱗翅学会

参考文献 (20)*注記

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