1. 1946年南海地震の被害追跡調査 : 和歌山県新宮市の延焼大火発生地区における人的被害と人間行動

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第二次世界大戦終結前後に、わが国では鳥取地震、東南梅地震、三河地震、南海地震、福井地震とたてつづけに大地震が発生している。これらの地震はいずれも大きな被害を生じさせているが、被害の甚大さの割には詳細な調査資料を見出だすことが難しい地震が多い。その理由として、当時が社会的混乱期にあり、種々の視点からの被害調査が行えない状況にあったことや実施された調査も結果を公の報告書として発行することが困難であったことなどが考えられる。これらの地震は、全て1000人前後以上の死者を出しており、いわば古典的地震の最後のグループに属するものである。したがって、人的被害や避難などの人間行動を解明するための貴重な事例といえる。しかし、地震当時から40年以上を経過した現在、被災経験者から直接被害実態を聴取することが年々困難になっており、早急に追跡調査を実施する必要がある。以上の視点に基づき、本研究では1946年南海地震の被害追跡調査を行ない、和歌山県新宮市の延焼火災発生地区における人的被害と人間行動こついて検討を加えた。調査は同市の延焼地域に属する5つの老人クラブの会員を対象として、調査票を用いた面接形式で行った。ただし、調査実施日に調査会場へ来られなかった人には老人クラブ役員に調査票の配布を依頼し、後日郵送してもらう方法をとった。調査票は全部で30の設問から成り、回答者の当時の住宅特性・個人属性と物的・人的被害および地震の最中、直後の行動、地震後の避難行動などを尋ねている。回答総数は65票(回収率54%)であった。得られた結果を要約すればつぎのようである。すなわち、新宮市では出火点が一ヵ所であり、同時多発火災のような混乱が生じなかった。また、火災の拡大がゆるやかであったため、広域避難行動も行ないやすかったと考えられる。調査により得られた死亡原因内訳によれば、延焼地域においても焼死と断定できるものはなく、家屋倒壊による圧死が多かった。死者の属性別の死亡率をみれば、男性では高齢者において高く、女性では全年齢にわたってほぼ等しくやや高い値を示した。

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