45. 1994年パエス(コロンビア)地震被害調査報告(速報)

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抄録

地震と震度 1994年6月6日、15時47分(現地時間)ごろ、コロンビア南部のカウカ県パエス村近くを震源とするマグニチュード6.4(Richter Scale)の地震が発生した。コロンビア国立観測所(Colombia National Seismological Network)によって求められた震源位置は、北緯2.9度、西経76.08度、震源深さ10kmの比較的浅い地震であった。この地震によってコロンビアのほぼ中央域が有感地域となった。各地の震度(MM震度階)は震央から40km以内で6~7、震央距離100km付近のカリ、ポパヤン、ネイバ市で5~6である。また、震央から約300kmに位置するボゴタ市域でも地震を感じた。著者らは6月18日より現地に入り被害調査を行ったので、ここにその被害概況を速報として報告する。被害の概要 地震当時、コロンビアは雨期で降り続く降雨によって地盤は完全に飽和状態となっていたため、被害のほとんどは斜面崩壊とその土石流による災害であった。被害が発生した地域はネバド・デル・ヴィラ火山(標高:5,750m)の南から南下するパエス川に沿った地域である。斜面崩壊と土石流による物的被害 ネバド・デル・ヴィラ火山山頂付近の万年氷が地震動で崩壊しパエス川に流下するとともに震源地域のいたるところで斜面崩壊が発生した。これらの土砂は土石流となってパエス川を流下し、この流域に点在する村々を襲い多くの家屋と人命を奪い、マグダレナ川のベタニア(Betania)にあるダムサイト付近まで達した。特に甚大は被害を被った震央付近の卜エス村ではこの土石流によって村全体が消滅した。地震動および土石流による家屋被害は、倒壊・流失家屋:620戸、被災家屋:2,400戸となっている。また、パエス川流域の道路や橋梁は斜面崩壊や土石流によっていたるところが被災し、特に、土石流によって流出した橋梁は10ヶ所にもおよんでいる。震央から約140kmに水力発電ダムがあるが、このダムに直接被害は発生していない。しかし、土石流による流木や土砂がダムサイトまで到達しているため、ダムの貯水機能障害など間接被害が発生している。今後も土砂の流下・堆積によってこの機能障害はますます増大する危険性がある。人的被害 当初の新聞報道による1,200人の死者・行方不明者の多くは高台に逃げ、最終的には死者200人、行方不明100人となっている。また、ホームレスなどの被災者は14,000人にのぼっている。

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