15. 阪神・淡路大震災と身体障害者 : 聴覚障害者を中心として

この論文をさがす

抄録

阪神・淡路大震災時における身体障害者の状況と対応行動、問題について、難聴者に対して実施したアンケート調査結果を中心に紹介するとともに、災害弱者対策の課題を提起した。アンケート調査は兵庫県難聴者福祉協会および神戸市難聴者協会の協力の下に両協会会員323名を対象に行った。回収数は256通、回収率は79.3%である。回答者は高齢者が比較的多く、また聴覚障害者全体からみると聴力の重い人がやや多い。また、いわゆる「ろうあ者」は含まれていない。したがって、兵庫県内に2万人近くいる聴覚障害者全体からみると調査結果には偏りがある可能性がある。なお、聴覚障害者、視覚障害者、肢体不自由者、内部障害者ならびに支援団体、行政に対する聞き取り調査の結果も一部補足として紹介した。その結果、7%が家具等の下敷きになったほか、落下したものにあたりけがをした人やガラス等を踏んでけがをした人もそれぞれ7%を超えている。家屋の被害は全壊が18.0%、半壊が17.2%と8人に1人は大きな被害を受けている。地震後、情報を求めてテレビ等をつけているが、緊急時の情報伝達メディアは音声メディアが多いことから、42%が状況がつかめなかったとしている。とくに、広報車等によるガス漏れや避難命令の広報を知ることかできなかった人もいる。避難をした人は31.3%であり、自宅が全壊被害を受けた人では87.0%に上っている。避難先は知人・親戚宅が40.0%と多く、ずっと避難場所にいた人は17.5%にであった。それ以外の人は避難先を変えている。避難所から自宅に出た人は15.0%、知人・親戚宅に13.8%、逆に知人や親戚宅から避難所へ2.5%などとなっていた。しかし、障害者にとって避難所生活にはいろいろな制約があり、健常者と同じ生活水準を保つことは難しかったようだ。情報補償面や移動面での壁、障害者理解の面での壁が指摘されている。以上の結果をもとに、災害弱者対策を進める上で必要と思われる課題を、生命補償、情報補償、移動補償、経済補償に整理して提起した。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ