クズハキリバチの営巣習性,特に育房葉片の加工と接着の状況について

書誌事項

タイトル別名
  • Nesting Biology of Megachile pseudomonticola Hedicke, with Special Reference to the Manipulation and Adhesion of Leaf Pieces Used for Cell Construction
  • クズハキリバチ ノ エイソウ シュウセイ トクニ イク ボウ ヨウヘン ノ カコウ ト セッチャク ノ ジョウキョウ ニ ツイテ

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抄録

クズハキリバチの営巣場所と巣の構造について,2002年8月に栃木県黒磯市で採取した巣で調査した.ハキリバチ類の育房では一般に最内側の葉片数枚が,透明な粘着物で緊密に接着されているが,本種では粘着物による接着は認められなかった.しかし葉片の縁をところどころ大顎でかんで,外側の葉片に密着するよう加工していた.特に育房蓋の最内側葉片では周縁部を丹念に加工して,側壁の葉片に強く密着させていた.育房側壁の卵形葉片では,葉表が育房の外側向きと内側向きに使用された葉片が混在していて,一定の傾向は見られなかった.しかし育房蓋の円形葉片では,葉表を内側向きに使用した葉片が明らかに多かった.育房蓋の葉片数は完成巣の最終育房を除くと2〜4(平均3.4)枚で,育房の配列順序に従って増加または減少するという傾向は見られなかった.これに対して完成巣の最終育房では10〜18(平均14.0)枚で,極端に多かった.育房当たり総葉片数は平均49.5枚で,本種の従来の記録に比べてきわめて多かった.本種の営巣場所である樹木の空洞などは,営巣空間の大きさが個々に大きく変異するので,営巣空間を充てんするのに必要な葉片数は事例ごとに変動する.老熟幼虫または繭を含んでいる育房では,蓋の最内側葉片に無数の微小孔が見られた.また,ときどき育房側壁の最内側葉片の上端部付近にも,同様の微小孔が見られた.これらの微小孔は老熟幼虫が大顎で葉片表面をかじることによって作られたと考えられるが,この行動の意味については不明である.

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参考文献 (23)*注記

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