二酸化チタン光触媒漂白材の漂白効果および臨床成績

書誌事項

タイトル別名
  • Effect and Clinical Results of 3.5% Hydrogen Peroxide TiO<sub>2</sub> Bleaching Agent

この論文をさがす

抄録

2006年末に発売された二酸化チタン(TiO2)を光触媒とする3.5%過酸化水素漂白材は,安全で漂白効果の高い第二世代のOffice Bleach材とされる.二酸化チタンに可視光線を照射して過酸化水素を活性化する方法は,従来のOffice Bleach材とは過酸化水素の活性化方法が異なるが,漂白を効果的に行うために必要な光線の波長や強度に関する報告は少ない.本研究では,二酸化チタン光触媒漂白材と従来からのOffice Bleach材とのヒト抜去歯に対する漂白効果,エナメル表面硬さの変化,走査電子顕微鏡(SEM)による表面性状の変化,漂白材のpH値を比較した.臨床では二酸化チタンは400nm付近の波長光で励起されることから,各種照射器の波長測定を行い,さらに照射時の温度上昇を測定した.また,臨床で二酸化チタン光触媒漂白材の効果を,色調の後戻りを含めて検討した.使用した漂白材は,二酸化チタン光触媒漂白材ピレーネ®(三菱ガス化学)と,従来のOffice Bleach材松風ハイライト™(松風)である.測定対象はヒト抜去歯69本で,これらを色調,硬さ,表面性状の測定・観察用の試片とした.照射光源の特性を把握するために,照射器11種の波長を測定した.照射時の温度上昇は,漂白材を模したペーストに照射して測定した.臨床での漂白は,被験者15名の上顎前歯に対し,ピレーネ®,照射器ZOOM!(Discus Dental,USA)を使用し,測色により色調変化を検討した.漂白終了から2週後,3ヵ月後,1年後にも測色と写真撮影を行った.その結果,抜去歯を用いた色調測定では,ピレーネ®に約400nmの可視光光源を近距離で照射する条件で色差13.1,松風ハイライト™の特性に合わせた照射条件で9.1となった.漂白前後のマイクロビッカース硬さ,SEMによるエナメル面の観察では,両者に差は認められなかった.ピレーネ®のpHは6.13,松風ハイライト™では3.91であった.二酸化チタンの光触媒効果が高いとされる約400nmの波長を発生する照射器は,ハイパーライテル(モリタ)とZOOM!であった.照射時に温度が40℃を超す照射器はなかった.ピレーネ®を臨床応用した際の色調測定後の色差ΔE*abは,3来院分の漂白終了時で4.9,漂白後1年経過で4.0となった.これらからピレーネ®は,エナメル質への侵襲は認められず,波長400nm付近の光照射で松風ハイライト™より高い漂白効果を示した.臨床でも,ピレーネ®は,安全性の高い取り扱い容易なOffice Bleach材として期待できると考えられた.同時にピレーネ®を臨床応用する際は,二酸化チタン光触媒に適した波長の光を発生する照射器の選択が重要であることも明らかになった.

収録刊行物

被引用文献 (3)*注記

もっと見る

参考文献 (32)*注記

もっと見る

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ