分子遺伝マーカーを用いて外来生物の侵入生態を探る:企画趣旨(<特集1>生物学的侵入の分子生態学) Introduction to the special feature: Molecular approaches to the study of biological invasions(<Feature 1>Molecular approaches to the study of biological invasions)

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著者

    • 西川 潮 N Usio
    • 国立環境研究所環境リスク研究センター Research Center for Environmental Risk, National Institute for Environmental Studies

抄録

19世紀以降の人間の移動の増加に伴い、様々な生物が意図的もしくは非意図的に、本来の生息域以外の場所に運ばれている。意図的導入の例としてはアライグマなどのペットの放逐が、非意図的導入の例としては船のバラスト水とともに運ばれるワカメや貝類などが挙げられる。このように本来の生息域から持ち出された生物は外来生物(または外来種)と呼ばれ、開発や乱獲とともに、生物多様性(遺伝子から生態系にいたる生命体の多様性ならびに固有性)の低下をもたらす主要因の一つに数えられている。生物学的侵入は、導入の意図の有無に関わらず、水面下で進むことが多いため、外来生物の侵入実態の把握には、人間社会で犯罪捜査などに使われる遺伝解析が効果的である。分子遺伝マーカーを用いた遺伝解析を通じてどのようなことが明らかとなるだろうか。第一に、侵入集団と在来集団の遺伝的構造を比較することで、侵入集団の由来が分かり、時には侵入経路の特定につながることがある。第二に、隠蔽種の侵入や侵入の回数を明らかにすることが可能となる。第三に、外部形態だけでは判定不能な交雑や遺伝子浸透の進行度を明らかにすることができる。第四に、中立遺伝マーカーと量的形質に基づく解析ならびに交配実験を通じて、外来生物の小進化に及ぼす遺伝的浮動と自然選択の相対的役割を明らかにすることができる。これらは、生態学的かつ進化学的現象の解明にとどまらず、外来種のリスク評価においても有効である。外来種の侵入段階ごとのリスクが明らかになれば、これらの知見をもとに、外来種の管理(生態系管理)を行うための研究に発展させていくことが可能となる。

収録刊行物

  • 日本生態学会誌

    日本生態学会誌 59(2), 129-130, 2009

    日本生態学会暫定事務局

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各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    110007340217
  • NII書誌ID(NCID)
    AN00193852
  • 本文言語コード
    JPN
  • 資料種別
    OTR
  • ISSN
    0021-5007
  • データ提供元
    CJP書誌  NII-ELS  IR  J-STAGE 
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