水中浸漬されたMineral Trioxide Aggregateの組成変化 : 表層部における元素分布の変動

  • 鞍立 桃子
    新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔健康科学講座う蝕学分野
  • 重谷 佳見
    新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔健康科学講座う蝕学分野
  • 韓 臨麟
    新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔健康科学講座う蝕学分野
  • 興地 隆史
    新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔健康科学講座う蝕学分野

書誌事項

タイトル別名
  • Compositional Change of Mineral Trioxide Aggregate Immersed in Water : Alteration of Elemental Distribution in the Surface Layer

この論文をさがす

抄録

Mineral trioxide aggregate(MTA)からのカルシウムイオンの溶出は,本材の生物学的作用の発現に深く関与すると思われる一方で,物性の低下を招く性質とも考えられる.そこで本研究では,MTAからのカルシウムイオン溶出過程で生じる構造・組成変化の実態を追究することを目的として,本材を蒸留水中に浸漬した場合に表層部で生じる各種元素の分布状況の変化を経時的に分析した.メーカー指示どおりに混和したMTA(Pro-Root®MTA,white)を37℃,湿度100%で24時間保管後,蒸留水中に7,4日あるいは28日間浸漬した.なお,非浸漬の試料を対照とした.次いで,試料割断面におけるCa,Si,Al,Biの分布を波長分散型電子線マイクロアナライザー(EPMA)により観察した.一部の試料については,試料表面(蒸留水との接触面)のEPMAによる元素分析を併せて行った.その結果,MTA表層部に比較的境界明瞭なCa低濃度層(以下,カルシウム溶脱層)が形成され,経時的に拡大することが観察された.さらに,MTAの表面に主として炭酸カルシウムで構成される析出物の形成がみられた.一方,SiおよびAlはカルシウム溶脱層内に析出物によると思われる高濃度層を形成した.以上より,水中浸漬されたMTAの表層部にカルシウム溶脱層の形成が確認されたが,その形成過程は構成成分の喪失へと一方的に進行するものではなく,表面における炭酸カルシウムの析出やカルシウム溶脱層内でのSi,Alの集積が並行して生じることが示された.

収録刊行物

被引用文献 (3)*注記

もっと見る

参考文献 (29)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ