構造化理論から知識の社会学へ(一)

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タイトル別名
  • From Theory of Structuration to Sociology of Knowledge
  • コウゾウカ リロン カラ チシキ ノ シャカイガク エ 1
  • 構造化理論から知識の社会学へ(1)

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抄録

ギデンズの構造化理論は「そもそも社会が存在するとはどのようなことであるのか」という存在論的な問題設定から出発して、認識論的な二元論に制約された西欧社会科学が陥りがちであった物象化と主意主義という二つの誤謬を克服しようとした独自の社会理論である。上記の問いから出発したギデンズが到達した答えは、社会構造は人間の行為主体性によって作られていると同時に、それを作り出す媒体でもある」という「構造の二重性」という観点から社会の存在を説明することだった。「構造の二重性」概念を基本的に承認しつつ、これを批判的に発展させようとするポストギデンズの構造化理論においては、二重性概念を、すべての社会事象に対して単線的に適用するのではなく、実践的な知識に支えられている「当たり前のこととして受け止められた二重性」と論述的な知識に支えられている「批判的で自省的な二重性」を両極とする連続体として把握することで、社会理論としてそれをさらに強化していこうとする立場が登場した。ポストギデンズの構造化理論においては、行為主体の知識能力をめぐって、ギデンズが積み残した課題を拾い上げて、より精密な考察を展開することに関心が集中している。以上の考察を踏まえれば、構造化理論に関するポストギデンズの議論を批判的に検討し、これを「知識の社会学」という方向性でさらに深めていく、という新たなテーマが浮かび上がってくる。次号に掲載予定の本論文後半部分では、行為主体性概念、構造概念に関するポストギデンズの議論をさらに詳細に検討するとともに、知識の社会学を「雇用関係の社会理論」として展開していくことを目指して、具体的な事象をあげて若干の試論を行う。

収録刊行物

  • 一橋社会科学

    一橋社会科学 7 1-49, 2009-08

    一橋大学大学院社会学研究科

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