ゴクラクトリバネアゲハの1新亜種 A new subspecies of Ornithoptera paradisea Staudinger, 1893 (Lepidoptera, Papilionidae)

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Abstract

著者らはパプアニューギニア中部のサザン・ハイランズ州のクツブ湖地域産とみられるゴクラクトリバネアゲハ,Ornithoptera(Schoenbergia)paradiseaを新亜種として記載した.クツブ湖地域はパプアニューギニア島を東西に走る中央山塊の南側斜面の一部を形成する地域で,パプアニューギニアのサザン・ハイランズ州の中央部に位置する.標高は約1,000m程.同地域からのO.paradiseaはHaugum&Low(1979)によれば過去に合計4雄の記録があるようであるが,十分に検討されていない.最近著者らはクツブ湖地域産とみられる9雄6雌を検した結果,全ての被検個体において多くの共通かつ安定した形態的特徴を見い出したので,それらは同一地域の同一個体群に属するものと判断し,さらにそれらの特徴の内の幾つかは既知の諸亜種と安定的かつ明確に相違していると判断したので,同地産のO.paradiseaを新亜種として記載した.上記の個体の内1雄をホロタイプに指定し,残余の被検個体をパラタイプに指定,さらに同パラタイプの内1雌をアロタイプに指定した.なお記載の正文は英語とするので下に和文に訳したものを掲載する.当ホロタイプ,アロタイプとも著者の一人蘇が所持する.ホロタイプ.雄(Figs 1-2),クツブ湖,サザン・ハイランズ州,パプアニューギニア.基本的な斑紋・翅形は既知の他亜種と同様.前翅.基部から翅頂までの長さは73mm.翅頂は尖り,外縁は幾分外側に丸く張り出す.地色はベルベット状の黒色,3つの金緑色紋は均一な金緑色.亜前縁帯と肘状帯は比較的広く,臀縁紋は細く短い(パラタイプの中には比較的長いものもあるが細い).裏面は金緑紋の発達がよく,黒色条は狭い.後翅.翅頂は少々角張り,外縁は極少し外側に張り出す.尾状突起は細く長い(ホロタイプ標本の尾状突起は両先端が破損欠落している).尾状突起の基部内縁に少量から痕跡程度の金緑鱗粉が出現する(ただパラタイプの内1雄は同様の金緑鱗粉を全く欠く).半透明黄金斑は第2,6,7及び中室に出現するが非常に減退し,それぞれの斑は翅脈上の金緑鱗粉により完全に広く相互に分離される.翅脈上の金緑鱗粉で形成される筋は幅広く明瞭な帯状になる.特に第7脈上の金緑鱗粉の筋も幅広く明瞭である(これは全ての被検個体に例外なく見られる).外縁の金緑色帯幅広く,中央部で少々広くなるが,その幅はほぼ均一.外縁黒帯はssp.arfakensisよりは狭く,原名亜種とssp.chrysanthemumよりは広い.裏面は他亜種と同様に黒色部が殆どなく,金緑鱗粉と半透明黄金斑のみになる.内縁部は銀灰色となり基部から肛角部にかけ長い白色毛がブラシ状に生じる.尾状突起の先端部分は金緑鱗粉を欠き黒色となる.頭部.黒色で,複眼後縁に白色の縁取りが存在する.胸部.上面には金緑斑点があり,側胸部の紅色毛はわずかに認められる.腿節.黄色鱗粉を具える.アロタイプ.雌(Figs 3-4),クツブ湖,2,000ft,サザン・ハイランズ州,パプアニューギニア.基本的な斑紋・翅形は既知の他亜種と同様.前翅.基部から翅頂までの長さは88mm.翅形は幅広く,翅頂は丸みを帯びている.表面の地色は黒に近い黒褐色.第1bから4室の小さい亜外縁斑列は白色から乳白色であるが表面に黒色鱗粉を散布し多少暗化する.第5から8室の大きい亜翅頂斑は白色で良く発達し極微量の黒色鱗粉を散布する.よく発達した中室紋は白色で外側に少々黒色鱗粉の散布がある.第2,3室の比較的大きい翅室紋も白色で外側に少々黒色鱗粉の散布がある.裏面は表面とほぼ同様.[Table]後翅.表面の地色は前翅同様.亜外縁帯の大きな紋は内側が白色,外側は明るい黄土色で表面に黒色鱗を散布し多少暗化する.中室には白紋を欠く.第1bから5室の亜外縁部に黒褐色の円形斑が出現する.裏面の地色は表面より少々黒みが少なく,亜外縁帯の大きな紋は内側が白色,外側は明るい黄色.頭部.黒色で,複眼後縁に白色の縁取りが存在する.胸部.上面には金緑斑点は無く,側胸部に紅色毛を認める.腿節.黄色鱗粉を具える.既知の諸亜種との比較5亜種(ssp.paradisea,ssp.arfakensis,ssp.flavescens,ssp.borchi,ssp.chrysanthemum)が有効に記載されているが,ssp.borchiとssp.flavescens は大屋(1983)の分類にしたがいそれぞれ原名亜種の地域型と雌型とした.従って比較は下記の3亜種とした.1)ssp.paradiseaは原記載と現在もたらされている比較的少数の標本を使用.原記載地はフィニステレ山脈.これに含まれるセピック川北側の山塊に産するf.borchiは比較的多数の標本が存在する.2)ssp.arfakensisは原記載と現在もたらされている多数の標本を使用.産地の信憑性に関しても,亜種としての有効既に関しても問題なし原記載地はニューギニア北西部のベラウ半島の西部アルファック山脈.3)ssp.chrysanthemumは原記載と現在もたらされている多数の標本を使用.産地の信憑性に関しても,亜種としでの有効既に関しても問題なし.原記載地はニューギニア北西部のベラウ半島の西部のマノクワリ周辺の高標高でない地域.新亜種の雄は全体的にはssp.chrysanthemumに似るが,同亜種との区別点としては,1)前後翅の金緑色部分の色調がより緑色を帯びる,2)後翅半透明黄金斑がより減退し4個になり,それぞれが翅脈上の金緑鱗粉により完全に広く分離する,3)特に後屈7脈上はssp.chrysanthemumでは金緑鱗粉が少なく,第6,7室の半透明黄金斑が融合しかかっている個体が大部分であるが,新亜種では同7脈上にも金緑鱗粉帯が幅広く形成され,第6,7室の半透明黄金部が完全に広く分離する.他亜種との区別は添付の表を参照.新亜種の雌は全体的にはssp.arfakensisに似るが,同亜種との区別点としては,1)後翅中室の白斑を欠く,2)後翅6室の亜外縁帯に黒褐色円形斑は出現しない,3)腿節は黄色の鱗粉を具える.他亜種との区別は添付の表を参照.謝辞Dr Volker Schneiderの協力なくしては本記載は不可能であり,ここに最大の謝意を呈します.また,記載に際し,多くのご助言,貴重な文献及び標本を使用させていただいた次の方々にも心からの謝意を表します:小林平一,大屋崇,大谷卓也,木村雅彦,杉山正,藤巻憲秀,岡久,遠藤俊次(敬称略).

The authors describe a new subspecies of Ornithoptera paradisea Staudinger from the Lake Kutubu area, Southern Highlands Prov., Papua New Guinea.

Journal

  • Cho to Ga

    Cho to Ga 49(2), 135-146, 1998

    THE LEPIDOPTEROLOGICAL SOCIETY OF JAPAN

References:  7

Codes

  • NII Article ID (NAID)
    110007630809
  • NII NACSIS-CAT ID (NCID)
    AN00147618
  • Text Lang
    ENG
  • Article Type
    ART
  • ISSN
    0024-0974
  • NDL Article ID
    4459809
  • NDL Source Classification
    ZR4(科学技術--生物学--動物)
  • NDL Call No.
    Z18-73
  • Data Source
    CJP  NDL  NII-ELS  J-STAGE 
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