ウラギンシジミ(鱗翅目,シジミチョウ科)の蔵卵数と寿命に関する知見

  • 矢後 勝也
    Japan Society for the Promotion of Science:Biosystematics Laboratory, Graduate School of Social and Cultural Studies, Kyushu University
  • 矢田 脩
    Biosystematics Laboratory, Graduate School of Social and Cultural Studies, Kyushu University

書誌事項

タイトル別名
  • Notes on the fecundity and longevity of Curetis acuta Moore (Lepidoptera, Lycaenidae)

この論文をさがす

抄録

2001年4月23日,福岡市西油山にて採集されたウラギンシジミCuretis acuta Moore,1877の越冬個体1♀を用いて採卵実験を行ったところ,蔵卵数と生存日数に関する著しい結果が得られた.この個体はやや汚損していたが,翅型は明らかに秋型の特徴を表わしており,前年秋に羽化した越冬個体と判断された.筆者らは本個体を用いて,原則として1日おきに採卵実験を行った.実験にはナイロン製のネットでできたケージを使用し,食草としてフジの新芽を入れ,午後の一定時間に高さ約1mの屋外で採卵した.また採卵時以外の時間帯はインキュベーター(20±1℃;14L-10D)による室内保管を行った.その結果,本個体は捕獲後87日間生存し,その間の産卵総数は343卵を記録した.本個体の産卵能力のピークは4月下旬から5月上旬で,その後,日々の経過につれて産卵数の減少が見られたが,7月中旬に死亡するまで本個体は確実に有精卵を産んでいた.本種の越冬♀は神奈川県や九州では3月下旬から産卵を始めるといわれており,それゆえ本個体も採集以前の時点で,すでにかなりの卵を産んでいたと想像される.本種の♀は条件が整えば,おそらく約400卵あるいはそれ以上の産卵能力を持つものと考えられる.本個体は明らかに越冬個体であるので,その羽化は前年の9月から10月に行われたとすると,本個体は10から11ヶ月間生きていたと考えられる.筆者らが知る限り,多化性かつ成虫越冬するチョウでこのような長期生存するものは,国内ではクロコノマチョウMelanitis phedima(Cramer,1780)(法西,1996,2001;白水,2000;石島・中島,2001;森田,2001)を除いて他にいない.

収録刊行物

  • 蝶と蛾

    蝶と蛾 53 (3), 181-184, 2002

    日本鱗翅学会

参考文献 (11)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ