釧路湿原久著呂川後背湿地における土砂堆積履歴と堆積厚の推定

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タイトル別名
  • Estimation of sedimentation depth and its history on backswamp of Kuchoro river, Kushiro mire, northeast Hokkaido
  • クシロ シツゲンクチョロガワ コウハイ シッチ ニ オケル ドシャ タイセキ リレキ ト タイセキコウ ノ スイテイ

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抄録

北海道東部の釧路湿原では、流入する河川流域の開発などに起因する、湿原内への大量の土砂流入が指摘されているが、湿原内での土砂堆積実態は明らかにされていない。そこで大量の土砂を流送していることが明らかになっている久著呂川を調査地として、その後背湿地における(1)土砂堆積履歴の記載、(2)堆積環境の変化要因の検討、および(3)土砂の流入堆積による相対的な地表面高の上昇と地表に対する相対的な地下水位低下が生じたか否かの検討をすることを目的に研究を行った。土砂流入状況は、河道に直角な調査ライン上の4地点と、対照として土砂流送量の少ないチルワツナイ川の後背湿地2地点で採取した土壌柱状試料について、深さ別に求めた炭素含量から推定した。また137Cs濃度分布と樽前a火山灰層を利用して、1963年と1739年の堆積層を推定した。その結果、久著呂川調査区では1963年前後に土砂の流入堆積量が増加するようになり、その増加傾向は河道に近いほど著しいこと、チルワツナイ川調査区では1739年以降、土砂の流入堆積が少ない環境が継続していたことが明らかとなった。この久著呂川調査区における増加傾向は、1957年頃より頻発した洪水によって引き起こされたと考えられた。土砂の流入堆積による相対的な地表面高の上昇は、土砂の流入堆積が土壌堆積速度(cm/yr)に与えた影響を評価することで検討した。1963年以降の無機物堆積量は、河道から150m地点のK2で0.521kg/m2・yr、河道から250m地点のK4では0.098kg/m2・yrであった。一方1963年以降の年平均堆積厚は、K2、K4でそれぞれ0.37cm/yr、0.34cm/yrで、無機物堆積量のような明瞭な差は認められなかった。チルワツナイ川調査区C1、C2の無機物堆積量は、久著呂川調査区に対して多い地点でも3分の1程度であった。一方、年平均堆積厚は久著呂川調査区と同程度であった。これらのことから、久著呂川調査区において1963年前後に増加した流入土砂は、堆積厚に影響を与えていなかったことが示唆された。先行研究の結果と比較すると、本研究の調査ラインにおいて堆積厚に影響を及ぼす規模の土砂流入が認められる範囲の境界は、河道からの距離100mから150mの間にあると考えられた。これらの結果は、久著呂川後背湿地においては、堆積厚に影響を及ぼす規模の土砂堆積が認められる範囲に比べて、堆積厚に影響を与えない規模の土砂堆積が認められる範囲が広いことを示唆している。

収録刊行物

  • 日本生態学会誌

    日本生態学会誌 60 (2), 157-168, 2010

    一般社団法人 日本生態学会

参考文献 (30)*注記

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