北ボルネオ,サパー州産ノーマンウラナミシジミについて Notes on Nacaduba normani ELIOT in Sabah, North Borneo (Lepidoptera, Lycaenidae)

Access this Article

Search this Article

Abstract

Nacaduba normani ELIOTノーマンウラナミシジミはアマミウラナミシジミ属中最小種のひとつで,一見Prosotasヒメウラナミシジミ属を思わせる.本種は1969年サパー州南東部より記載され,ELIOT(1969)によると,ボルネオの原名亜種のほかセルベスに別亜種が分布する.屋内ではbereniceグループに属し,同グループの基幹種N.bereniceによく似るが,♂翅表はbereniceより濃い青紫色,外縁の黒色ふちどりはとくに後翅で顕著に広くなり,♂♀裏面では後翅第2室肛角部の黒紋はよりうすいオレンジ色の細条で囲まれる.N.bereniceでは,♂翅表はnormaniよりうす色,♂♀裏面後翅肛角部の黒紋は漁いオレンジ色でかなり太く囲まれる.♂ゲニタリアでは,両種はvalvaの輪郭により明瞭に区別できる.N.normaniはN.bereniceと混同されていたため,現在までその記録はきわめて少ない.現在森下の手許にはTawau,Lahad Datuで1974〜1988年に採集された19♂9♀がある. 食樹と加害状況 本種の幼虫はココアTheobroma cacao(アオギリ科)を加害する.著者は1970年代に本種がタワウ市のココア園に多産することを知った.幼虫はココアの木の若芽を食し,防除を怠たると蝶の個体数は急速に増えるが,殺虫剤の噴霧により容易に駆除できた.ふつう2週間毎の噴霧で充分であった.しかしLahad DatuのLadang Tanming Duaのココア園のように熱帯雨林に近接する場合,加害はしつようで,噴霧の回数を多くしなければ若葉は完全に食害される.たまたま噴霧のとどかないココア園の緑陰樹Paranephelium nitidum(ムクロジ科)に産卵する本種♀を発見したとき,こうしたしつような加害の原因を推定し得た.この樹はもともと同地方の熱帯雨林を形成する樹種のひとつで,ココア園に適当な日影を与えるためとくに残されたものであった.その後の調査ではこの樹種の大多数が本種の食樹であることが明らかになった.N.normaniの本来の食樹はこのP.nitidumであり,輸入樹であるココアは当然二次的な食樹である.ただし現在では本種はココアの方を嗜好するらしい.さらにマメ科の蔓草bauhinia羊蹄甲藤の1種の若葉を食べる本種の幼虫を観察したが,この植物は好まれないようである.なお本種の近縁種N.bereniceも同じサバー州TawauでココアにつくことがFUJII(1987)により詳細に報告されている.産卵・幼生期・羽化 ココア,あるいはParanepheliumでも,卵は軟らかい若葉の裏面または若枝にひとつずつ,または数個まとめて生みつけられる.産卵直後はクリーム色,2日後にふ化.形は通常のまんじゅう型,多数の凹点がらせん状に刻まれ,直径約0.5mm.1,2令幼虫はうすみどり色,中令以降はうすみどりからうすいピンク,濃色の背線,亜背線が認められる.幼虫期間は7〜8日.未同定の小型のアリの1種が訪れるが,本種と関係をもつのはこの1種に限られる.野外では地上の落葉,カバープラントの間で蛹化するらしく,食樹上で蛹を見出したことはない.蛹の色彩に2型あり,ひとつはうすみどりでほとんど無紋,他は肉色,黒褐色の斑点があり,斑点の大小は個体により一定しない.蛹は長さ7.2mm-7.9mm,蛹期聞は6日.成虫の羽化は午前9時から午前10時までに行われた.

Nacaduba normani, a small Lycaenid butterfly rather recently described from Borneo, belongs to the berenice group of the genus. The larvae of this species were found to feed on young leaves of cocoa tree, Theobroma cacao. The stubborn infestation by the larvae was caused by the presence of the original host plant, Paranephelium nitidum retained as a shade tree of the cocoa plantation. Eggs hatched 2 days after oviposition. The larval stages lasted 7 to 8 days. Very small ants were in association with the larvae. The pupal stage lasted 6 days. The emergence of adults took place between 0900 and 1000 hrs.

Journal

  • Lepidoptera Science

    Lepidoptera Science 41(3), 149-154, 1990

    THE LEPIDOPTEROLOGICAL SOCIETY OF JAPAN

Codes

  • NII Article ID (NAID)
    110007707848
  • NII NACSIS-CAT ID (NCID)
    AN00147618
  • Text Lang
    ENG
  • ISSN
    0024-0974
  • NDL Article ID
    3708173
  • NDL Source Classification
    RA84(動物一般・分類・進化--昆虫)
  • NDL Source Classification
    ZR4(科学技術--生物学--動物)
  • NDL Call No.
    Z18-73
  • Data Source
    NDL  NII-ELS  J-STAGE 
Page Top