インドネシア,スラウェシ島産シジミチョウRapala属の1新種及びその近縁種について Notes on some species of the genus Rapala (Lepidoptera : Lycaenidae) from Sulawesi, with the description of a new species

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Abstract

これまでに知られたスラウェシ島(周縁の小島を含む)産のRapala属のシジミチョウは5種と考えられ,これらに与えられたと思われる種小名は14を数える.このうち♂♀共にその表面が青紫色を帯びるRapala manea manea (Hewitson, [1863])とRapala varuna olivia H. H. Druce, 1895の2種に対しては,それぞれ単数の種小名が亜種名として当てがわれている.一方,♂表面に赤橙色斑を持ち♀表面が紫色を帯びないRapala dioetas (Hewitson, [1863]), Rapala ribbei (Rober, 1886), Rapala enipeus (Staudinger,1888)の3種に対しては,それぞれ複数の種小名がある.これらの一部は再検討された(Takanami, 1989)が,依然不明確のままに残されたものがあった.今回,1新種を含めてこれらを整理する機会を与えられたので,手持ち資料の範囲でまとめた. Rapala ribbei (Rober, 1886)♂表面の赤橙色部は発達し,特に後翅では黒縁はほとんど糸状になる.♂後翅表面第7室基部の半円形の性斑に加え,第6脈基部には比較的大きい三角形の第二性斑を現す.♀表面の地色は暗褐色で,輪郭の不明瞭な黄燈色部を前後翅に現すものから,これを全く欠くものまで変異の幅が大きい.一般に南部の産地の♀は黄橙色部が発達し(ribbei),中北部の産地のものは黒い個体(colossus)が多い.普通他のスラウェシ産Rapala各種に比べ大型だが, irregularisのような小型の個体も見られる.スラウェシ本島各地から得られているが個体数は多くない. Rapala dioetas (Hewitson, [1863])♂表面赤橙色部は,普通前翅の中室下半部から第1b室基半部にかけて,後翅の第2-4室基半部に現れるが,特に後翅ではenipeusに比べ発達が悪く,小型の個体においてはしぼしば消失する.また中にはenipeus同様,表面橙色部が目だって黄橙色になる個体もあり,後模式はまさにその型である.♂後翅表面第7室基部の性斑は半円形のやや明るい灰褐色で,第6脈基部にはenipeusやribbeiに見られるような第二性斑は普通現れないが,大型の個体には稀に微かに認められる場合がある.♂前翅裏面後縁部の毛束は灰褐色のものが多い.♂交尾器phallus尾端部の形状は丸く,開口部の中央に大きな鉤爪状突起が1個ある.♀は通常くすんだ黄橙色斑を前翅表面に現し,その広がりは♂よりもやや狭く輪郭はぼやける,スラウェシ島全域に広く分布し, Banggai島産にbangkaiensis,南部Salayar島産にnoachisなどの名があるが,同じ産地内の個体変異の幅が大きく,地理的な亜種は認め難い. Seitzにより図示されたzyldaも記載文はないが,恐らく本種と考えられる(Corbet, 1942). Rapala enipeus (Staudinger, 1888)♂表面赤橙色部はdioetasよりも発達し,前翅ではdioetas同様に現れるが第1b室でやや大きく広がり,さらに後翅では第2-5室に幅広く現れ中室内にまで及ぶ.中には赤橙色部がribbeiのように後翅第6室内にまで広がる個体(bonthainensis)もある.またdioetas同様,♂には表面橙色部が著しく黄色くなる個体(cindy)がある.♂後翅表面第7室基部の半円形の性斑はdioetas同様だが,第6脈基部には小さいながらも特殊鱗の集まった筋状の第二性斑を持つ.♂前翅裏面後縁部の毛束はdioetasよりやや明るい黄褐色のものが多い.♂交尾器phallus尾端部の形状は頭方向に向かって右角が角張り,開口部の左右に大きな鉤爪状突起が1個ずつある.♀表面は一般に暗灰褐色だが,前翅第3室基部を中心に微かに黄橙色部を現す個体もある.dioetas同様スラウェシ島のほぼ全域から知られる. Rapala cassidyi sp. n.額部は白色.触角は33節.脚部はdioetas同様に黒地に白の横縞.♂表面地色は黒褐色.黄橙色部は著しく減退し,前翅第1b-2室および第3室の基部に中室下脈に沿って細長く直線状に現れ,後翅では第2-4室基半部に微かな橙色鱗粉の散布が見られるのみ.また前翅翅頂部及び前縁は白くなるが,これは近似のdioetasやenipeusには全く見られない特徴である.また♂後翅表面第7室基部の半円形の性斑は著しく小型で,dioetasなどと比較して面積比は約5分の1程度,幅は約1mm,またdioetas同様第二性斑を現さない.裏面色斑はdioetasとほとんど同じで地色は黄土色,前翅後縁の毛束は灰褐色.♂交尾器phallus尾端部の形状は,頭方向に向かって右側に筋が入り右角に短い突起を持ち,開口部左側には大きな鉤爪状突起が1個現れる.♀は未知.今のところスラウェシ島中北部からのみ得られている.本種は表面上dioetasあるいはenipeusの黒化型に見えるが,色斑のほか性標や♂交尾器にも安定した差異が認められ別種と判断される.

Rapala ribbei, Rapala dioetas and Rapala enipeus from Sulawesi are reviewed. Lectotypes of Rapala bangkaiensis, Rapala bonthainensis and Rapala toliensis are designated, and their taxonomic status are considered. Rapala cassidyi sp. n. from Sulawesi is described.

Journal

  • Lepidoptera Science

    Lepidoptera Science 43(3), 193-202, 1992

    THE LEPIDOPTEROLOGICAL SOCIETY OF JAPAN

Codes

  • NII Article ID (NAID)
    110007707925
  • NII NACSIS-CAT ID (NCID)
    AN00147618
  • Text Lang
    ENG
  • ISSN
    0024-0974
  • NDL Article ID
    3799526
  • NDL Source Classification
    RA84(動物一般・分類・進化--昆虫)
  • NDL Source Classification
    ZR4(科学技術--生物学--動物)
  • NDL Call No.
    Z18-73
  • Data Source
    NDL  NII-ELS  J-STAGE 
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