シランカップリング剤への酸触媒添加と接着までの経過時間がレジン接着に及ぼす影響

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  • Influence of adding Acid Catalyst to Silane Coupling Agents and Elapsed Time before Resin Bonding on their Bond Strength

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抄録

シランカップリング剤の反応機構は複雑で,種々の要因に影響される.本研究の目的は,4種のシランカップリング剤を用い,酸触媒添加と,処理後コンポジットレジン接着までの経過時間が引張接着強さに及ぼす影響について検討することである.3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(3-MPS),ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン(4F)と3-MPSとの混合シラン(4F/3-MPS),3-{[1'-(ペルフルオロ-3-メチルブチル)メチル-2'-(メタクリロイルオキシ)]エトキシ}プロピルトリメトキシシラン(MA5bF)ならびに3-{[1'-(ペルフルオロ-9-メチルデシル)メチル-2'-(メタクリロイルオキシ)]エトキシ}プロピルトリメトキシシラン(MA11bF)を2 mass%エタノール溶液として調製した.さらに,上記シラン溶液に酢酸を10vol%添加した計8種のシラン処理剤を用意した.各シランで処理したガラスを,5分間および60分間,ならびに1,2,7日および14日間恒温恒湿下で保管した処理面に対する,Bis-GMAとTEGDMAとの混合レジンモノマーの接触角を測定した.同様に保管した後,化学重合型コンポジットレジンを接着し,7日間37℃水中に浸漬する群と10,000回のサーマルストレスを与える2群に分け,それぞれの引張接着強さを測定した.その結果,3-MPSは2日後で小さい接触角となり,接着強さも5分後と比べて有意に高い値となったのに対し,酸触媒を添加すると経過時間の延長とともに接触角が上昇し,コンポジットレジンの接着強さも低下する傾向であった.4F/3-MPSは,酸触媒添加の有無にかかわらず,2日後は5分後と比較してレジンモノマーの接触角が小さくなり,接着強さも水中保管およびサーマルストレス後で有意に高かった.同一分子内に疎水性のフルオロアルキル基とマトリックスレジンと反応するメタクリロイル基をもつMA5bFとMA11bFの接触角は,経過時間の延長とともに小さくなる傾向を示し,酸触媒を添加すると1日もしくは2日後で高くなった.特にMA5bFの接着強さは,7日後接着で3-MPSと比較して水中保管およびサーマルストレス後ともに有意に高い値であり,破断面もコンポジットレジンもしくはガラスの凝集破壊を示した.以上の結果から,化学式量の高いシランカップリング剤で処理する場合は,触媒を添加してただちに接着するよりも,触媒を添加せずに接着までの経過時間を長くしたほうがレジンとのぬれ(相溶性)も向上し,接着強さも高くなる傾向が示された.

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