実験的骨粗鬆症における雄ラットの下顎骨に関する研究

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  • Research on Experimental Osteoporosis of the Mandibula in Male Rat's

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抄録

高齢化が進む現代において,骨粗鬆症は注目される疾患の一つである.骨粗鬆症は骨の脆弱化から骨折のリスクが生じやすくなる疾患と定義されている.2000年にGrossiらの疫学的調査より歯周病のリスクファクターの一つであると提示され,現在にいたるまで歯周病と骨粗鬆症の関係についてさまざまな検索がされているが,歯周病のリスクファクターとしての因果関係について明確な見解がない.本研究ではカルシウム・リン欠乏飼料(以下,Ca・P欠乏飼料)を与え意図的に代謝阻害を起こし,骨粗鬆症を惹起させた雄ラットの下顎骨と大腿骨を対象として,骨の構造変化を未脱灰研磨標本とマイクロフォーカスX線CT(以下,マイクロCT)所見による三次元画像観察と骨梁構造解析を中心に検討した.雄Wistar系ラットを用い15週齢より実験を開始し,実験期間を10週と20週として,通常飼料のコントロール群とCa・P欠乏飼料群に分け飼育した.屠殺後に採取した左側下顎骨と大腿骨はマイクロCTを用いて解析を行い,右側下顎骨と大腿骨は未脱灰研磨標本作製後,コンタクトマイクロラジオグラム(以下,CMR)の撮影を行い観察した.その結果,以下の知見を得た.1.CMRとマイクロCT所見1)CMR画像から10週Ca・P欠乏飼料群の大腿骨皮質骨では空洞化がみられ,20週ではさらに空洞化が進行していた.また,10週Ca・P欠乏飼料群の下顎骨では槽間中隔に空洞化がみられ,20週ではさらに空洞化が進行し皮質骨の内側にも空洞化がみられた.2)マイクロCT画像から10週Ca・P欠乏飼料群の大腿骨と下顎骨の海綿骨はともに骨梁構造が細くなり,20週ではさらに骨梁構造が細くなり骨梁間隙に広がりがみられた.2.骨梁解析結果1)大腿骨と下顎骨の10週,20週のCa・P欠乏飼料群の骨梁解析では,骨組織体積と骨表面積に有意差を認めなかった(p<0.05).また,骨梁数に差はなく骨梁幅と骨密度が減少し,骨梁間隙が有意に大きくなった.2)皮質骨の厚さは下顎骨歯頸部のCa・P欠乏飼料群で有意に薄くなっていた.これらの結果から,Ca・P欠乏飼料群の大腿骨と下顎骨はともに実験的に骨粗鬆症を惹起したと考えられた.下顎骨と大腿骨の海綿骨は,骨梁構造の骨梁幅が細くなり骨梁間隙が広がり,槽間中隔の空洞化がみられ骨密度が低下し,骨の脆弱化が進行していた.以上より,骨粗鬆症の生じた下顎骨の歯は通常の咬合圧を十分に支えられない構造となり,咬合性外傷を惹起することが考えられる.それにより,歯周病をさらに進行させるリスクファクターとなることが示唆された.

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