急性冠症候群と考える院外心停止の1剖検例

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タイトル別名
  • An Autopsy Case of Acute Coronary Syndrome in Out-of-Hospital Cardiopulmonary Arrest
  • キュウセイ カンショウコウグン ト カンガエル インガイ シンテイシ ノ 1ボウケンレイ

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抄録

論文(Article)

44歳、女性。乗用車を運転中に意識消失し、20分後に救急隊が到着した際には心肺停 止状態であった。心電図上は心室細動であり、心肺蘇生法や除細動等を施行しながら、 当院救急部へ搬送された。救命処置を行うも反応なく、死亡が確認された。autopsy imagingを施行したが、明らかな死因の特定に至らず、剖検を行った。冠動脈3枝のい ずれにおいても粥状動脈硬化を認め、さらに左前下行枝の中枢側には壁在性の新鮮血栓 が確認された。また左前下行枝の灌流域である心室中隔の前2/3の部分に一致して陳旧 性心筋梗塞が確認された。一方、心筋線維の波状化や収縮帯壊死、好中球浸潤といった 急性心筋梗塞の早期でみられる所見は捉えられなかった。なお他臓器に死因につながる ような明らかな所見は認められなかった。本症例は左前下行枝における血栓形成、灌流域に陳旧性心筋梗塞を認めたものの、明 らかな新鮮梗塞巣は認められなかった。一般に急性心筋梗塞の形態学的変化は発症後5 ~6時間を経てようやく観察されるようになるため、本症例のような突然死において急 性心筋梗塞の診断は困難である。こうした症例の診断に際しては、急性冠症候群の概念 に含まれる心臓性突然死が最も合致すると考えられた。この疾患概念は、冠動脈病変に 起因して発症したという、より病態に即した意味合いを持っており、本症例のように急 性心筋梗塞の形態学的変化を捉えきれない症例の集積に寄与する可能性がある。

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