世俗化論における宗教概念批判の契機

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タイトル別名
  • The Motif of Criticizing the Concept of Religion in Secularization Theories
  • セゾクカロン ニ オケル シュウキョウ ガイネン ヒハン ノ ケイキ

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抄録

本稿の狙いは、世俗化論をそれが伴ってきた「宗教とは何か」という問いについて再解釈するとともに、宗教概念批判論を経た現在においてこの問いが持つ意義を示すことにある。世俗化論と称されてきた諸理論は、「従来的な意味における宗教」と「従来見逃されてきた種類の宗教」の双方を捉えようとする上で、宗教に関する高度に一般的な考察を展開したところに特徴があった。しかし、宗教復興現象への関心の高まりや、宗教の定義に関する理論構成上の不備といった理由から世俗化論に対する批判が強まると、それが担ってきた宗教の一般的考察もまた回避されるようになった。また近年では、系譜学的手法による宗教概念批判論によって、この概念の学的な使用自体が問題視されてきてもいる。しかし、適切な理論的前提の下では、近現代社会について「宗教とは何か」を問う視点は、系譜学的概念批判論の洞察を深めながら、これと相互に補完しあう社会学的宗教概念批判とも称しうる研究実践を導くものである。

収録刊行物

  • 宗教研究

    宗教研究 85 (3), 623-643, 2011

    日本宗教学会

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