中国における日系自動車1次部品メーカーの取引優位性 : プレス金型取引にみる欧米系メーカーとの比較から

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  • Transaction advantages of Japanese automobile parts manufacturers in China : Comparison with Western manufacturers in consideration of stamping die transactions
  • チュウゴク ニ オケル ニッケイ ジドウシャ 1ジ ブヒン メーカー ノ トリヒキ ユウイセイ プレス カナガタ トリヒキ ニ ミル オウベイケイ メーカー ト ノ ヒカク カラ

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抄録

本論は今や世界最大の自動車生産国となった中国において、日系自動車1次部品メーカーが欧米系メーカーに対し、取引上どのような優位性を持って中国サプライヤーを確保しているのか、言い換えれば、中国サプライヤーは日系メーカーとの取引にどのようなメリットを見出しているのかを、特に、生産技術のカギを握るプレス金型を対象に、明らかにするものである。日本の自動車産業の競争力は優秀なサプライヤーの協力によるところが少なくない。一方、成長めざましい中国といえども外資系メーカーの要求に応えられるサプライヤー、特に金型メーカーはまだ少ない。そうしたなかでも日系の場合、完成車メーカー、1次部品メーカーまで日系資本で占められ、そこまでにかかるコスト負担を軽減するために、2次メーカーでの中国サプライヤーの活用はコスト競争力維持の点から必要不可欠となっている。すなわち、ここで中国金型メーカー確保に向けた欧米系メーカーとの競争関係が存在することになる。その際の競争側面として、(1)発注単価、(2)発注量の大きさ、(3)発注の継続性、(4)発注量の安定性、(5)発注側企業の企業としての成長可能性、そして取引を通じて革新的技術に接する機会が受注側企業から得られか否かという(6)製品・生産技術における革新性が指摘される。このなかで、(1)について日系は欧米系に対し表面的には劣位にある。しかし、欧米系の(1)の内容を仔細にみると、市場取引により受注が決まるため、また材料費も日系以上にかかるため必要コストも大きく、必ずしも表面的な数字だけで優位性があるとは言えない。一方、組織的取引の日系は特定メーカーとの(3)を重視するため(4)に優れ、金型メーカーの経営課題である受注の安定に寄与している。さらに(3)の重視のため取引のなかで、より高度な設計業務の委託や無償の技術指導も行われ、(6)の機会にも享受している。表面上は(1)で劣位にあるのも、こうしたコストが上乗せされていないとみることもできる。このように表面的には取引上劣位にある日系自動車部品メーカーであるが、その実態を詳細にみると、欧米系メーカーに比べ、むしろ優位性を持っていることが明らかになった。

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