LiDARデータを用いた林道設計手法と作業道配置手法の開発

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タイトル別名
  • Development of forest road design and strip road networks arrangement support techniques using LiDAR data
  • LiDAR データ オ モチイタ リンドウ セッケイ シュホウ ト サギョウドウ ハイチ シュホウ ノ カイハツ

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抄録

本研究は、森林管理、木材生産活動には必要不可欠である林内路網整備を効率的に行うため、これまでの数値地形図では地形の再現性が低く実用化が困難であった、コンピュータ上での林道設計・作業道配置支援手法を、森林域の詳細な地形を把握可能な航空機LiDARデータを用いて、開設コスト、崩壊危険度等を考慮して開発した。林道設計では、通常の道路設計と異なり開設コストの制約が大きく、開設コストを低く抑えるための工夫として、構造物を少なくするための路線開設位置、土工量を最小化する線形の採用などの手法が必要になる。このため、適切な設計を行う際には、詳細な地形情報が不可欠となる。そのために、第二章では従来使用されてきたDTMに比べ、詳細な地形形状を把握できるとされている、LiDARデータを林道設計に適応した際の有効性について検討した。LiDAR計測によって作成されたDTMと従来から用いられている地形図から作成したDTMで、林道開設時における土工量を推定し、代替路線の設計手法の検討を行った。結果は、LiDARデータに基づくDTMを利用することで、2.67%の誤差で土工量が推定でき、代替路線の検討も簡易に可能となった。しかし、森林内においてレーザ計測の誤差が生じていることが明らかとなり、効果的な地形推定手法の検討が必要となった。第三章では、LiDARデータの地表面推定手法について検討した。これまでのフィルタリング手法は主に都市部を対象としており、森林域に適応すると小規模な尾根や沢、路肩等の微地形の再現性に問題があるため、新たなフィルタリング手法である交角法の開発を行い、地形の再現性の向上を図った。交角法での自動処理の結果は、自動+手動フィルタリングを行い、メーカが作成したDTMとほぼ同等の精度となり、路肩や尾根などの再現性を高めることが可能となった。作成した高精度地形情報を活用し第四章では、3次式スプラインとダイナミック・プログラミングを用い、林道開設費用を抑えた自動設計手法の検討を行った。林道の線形は地形に順応しながら、開設費用を抑えるためには、路線全体での土工量のバランスをとることが望ましい。そこで、任意に設定した始点から終点間において、自動的に通過候補点を決定し3次式スプラインで点間を補間しながら、最小の開設費用となる線形を選択する方法を開発した。この手法は、平面線形だけでなく、勾配の変化,法面長を抑えることができ,地形順応型林道設計に効果的であった。また,土工費用最小路線の探索も可能となり,実際の林道に比べ,開設費用を抑えた林道設計を自動的に行うことができるプログラムを開発することができた。第五章では、実際の開設時に大きく影響を与える、路線の崩壊危険性と、開設区間の土層厚について検討した。崩壊危険性については、力学的評価手法である、無限長斜面安定解析式に10年ごとの確率雨量を与え、崩壊危険度分布を把握した。土層厚を広域に調査するのは困難なことから、地形傾斜と集水域平均奥行きでクラス分けを行う手法の適応性を検討したところ、現地調査の結果をほぼ再現しており、この手法を用いて土層厚推定が可能であった。この結果から、路線の修復費用と、切岩を考慮に入れた路線設計が可能となった。ここまでの章では、林道もしくは基幹作業道の設計を主に検討していた。効率的な基盤路網整備を行う際には,基幹道から伸びる,支線作業道の配置も重要となる。そこで第六章では、効率的な路網配置を行うために、LiDARによる高解像度情報を利用し、集材作業を考慮した路網配置計画手法を検討した。作業道の配置は林況や集材システムに即して,開設順位,路網密度等を決定する必要があるが,林況が記載されている森林簿は,現状から乖離している場合も多く見られ,配置計画検討の際にあまり有効ではない。そこで、LiDARデータのDSMから、間伐対象林分を把握し作業対象小班の決定、地形情報から集材線の決定、土場位置を結ぶ、ドロネー網とシュタイナー木を利用した基幹作業道配置、各土場を接続する支線作業道配置の順で処理を行う手法を開発した。接続した各作業道において、これまで開発した路線設計を適応し路線開設費用の最小化を行い、DSMより立木の情報を把握し、集運材費用を算出することで、これまでに比べより具体的な配置計画案を提案可能となった。以上のことから、LiDARデータを用い高解像度情報を把握することで、施業計画立案に必要な、基幹道設計、集材システムの検討、細部路網配置を行うことができた。また、従来に比べ高い地形再現性であるため、作業費用がより正確に把握可能となり、作業現場において利用可能なレベルでの配置計画を提示することできた。これによって、多くの労力・経験が必要となる、配置計画の支援が可能になったと考えられる。

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