理不尽な集合暴力は誰がどのように裁くことができるか : ケニア選挙後暴動の事例から

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タイトル別名
  • Judgment of the Collective Violence of Mass Killing : With Special Reference to PEV in Kenya
  • リフジン ナ シュウゴウ ボウリョク ワ ダレ ガ ドノ ヨウ ニ サバク コト ガ デキル カ ケニア センキョ ゴ ボウドウ ノ ジレイ カラ

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抄録

1990年代のアフリカは内戦と内乱の時代だった。たとえば1994年のルワンダではわずか数カ月で100万人に近い犠牲者がでた。スーダン、エチオピア、シエラレオネ、コンゴなどでも大量の犠牲者がうまれ社会に癒しがたい傷を残した。2000年代にはいると、この社会に刻まれた傷跡を癒し社会的和解を展望するさまざまな試みが登場する。しかし夥しい数の死者への慰謝や心身に深い傷をおった犠牲者の回復は、いかにして可能なのだろうか。社会に充満する憎悪や復讐の叫びをいかにして鎮めることができるのだろうか。こうした圧倒的な集合暴力をともなう大量殺戮に対して、近年、注目され影響力を増大させているのは、普遍主義的正義観念にもとついたグローバル基準の国際法廷の存在である。2003年に設立された国際刑事裁判所は、ジェノサイドや人道に対する罪などを対象にして、国民国家の主権や正義の文化相対主義を超越して、普遍主義的人道主義を唱えて、大量殺戮の責任者を特定し処罰してきた。国家元首であっても免責することなく、逮捕し訴追するグローバルな正義の最終的な擁護者として登場している。本研究は、この普遍主義的な国際法廷のもつ「二重基準」や「ご都合主義」的性格を批判したうえで、ローカル・コミュニティの伝統的紛争解決法とそこにおける被害(苦難)を物語る力に着目して法廷外のチャンネルを通した正義回復の可能性を検討する。そのために2007-2008年に生起し1000名以上の犠牲者と数十万人の避難民をうみだしたケニアの選挙後暴力を事例として考察する。

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