水田環境の多様性を微生物から考える(<特集1>今こそ水田生物群集を捉えなおす-ミクロからマクロまで-)

書誌事項

タイトル別名
  • Diversity of rice field ecosystem estimated from the microbial communities(<Feature 1>Reviewing rice field community now)
  • 水田環境の多様性を微生物から考える
  • スイデン カンキョウ ノ タヨウセイ オ ビセイブツ カラ カンガエル

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抄録

水田は、夏季の水稲栽培期間は湛水状態に置かれ、水稲収穫後は落水状態で翌年の春まで放置される。水田は、水稲の増収を目的に様々の圃場管理がなされる特異な人口湿地であるにもかかわらず、水田土壌生態系には多様な微生物群集が生息し、その多様性は土壌中に様々な微生物環境が存在することに起因する。筆者らは、水田圃場から、1)表面水・浸透水、2)表面水中の小型甲殻類、3)土壌、4)水稲根、5)稲ワラ、6)堆肥(製造過程、土壌に施用後)を季節ごとに採取・回収し、リン脂質、DNA、RNAを抽出後、リン脂質脂肪酸組成から微生物群集構造の全体像を、DNA、RNAに各種のプライマーを使用することにより、真正細菌、真核生物、メタン生成古細菌等の微生物群集構造をそれぞれ解析し、各部位における微生物の群集構造とその多様性を比較した。また、篩を用いて表面水中の30μmから2cmの水生生物を採取し、主に門や綱のレベルで同定するとともに各個体数を計数した。その結果、各部位には異なるグループの微生物群集が生息し、生物多様性、群集構造は各部位ごとに異なっていた。なお、各部位において季節変動が観察されたが、その変動幅は各部位間での違いに比べて小さいものであった。また、水生生物群集は、季節変動、施肥、生息部位、耕作の影響を受けるとともに、その多くの種類が水田圃場内で越冬することが明らかとなった。加えて、水田には多数のウイルスが生息し細菌の死滅の大きな原因となっているとともに、そのウイルス群集は、海洋中の群集と全く異なり、多様性は水田土壌のほうが高いことが推察された。

収録刊行物

  • 日本生態学会誌

    日本生態学会誌 62 (2), 157-165, 2012

    一般社団法人 日本生態学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (56)*注記

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