長崎県水稲葉枯症 : 発症に伴う体内代謝変化のメタボロミクスによる解析

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タイトル別名
  • A unique paddy-rice disorder in Nagasaki-analysis of stress-related metabolites in rice leaves by means of metabolomics
  • ナガサキケン スイトウ ハガレショウ : ハッショウ ニ トモナウ タイナイ タイシャ ヘンカ ノ メタボロミクス ニ ヨル カイセキ

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抄録

長崎県北部中山間の特定地域では,水稲上位葉の葉縁部や先端が枯死する現象が1960年代から観察されてきたが,本障害(水稲葉枯症)の原因やその発症機構についてはよく分かっていない.本研究では,葉枯症をもたらすストレスに関連する代謝産物を明らかにする目的で,現地の葉枯症発生地域および非発生地域において生育時期別に採取した水稲葉を供試し,GC-MSによる代謝成分の一斉分析を行った.同定された主要代謝物のイオン強度を全試料間で比較したところ,葉枯症発生地域で栽培された水稲では光合成初期産物であるフルクトースやグルコースが多く含まれる傾向が認められた.また,発症に伴う特異的な代謝物の変動を高精度検出するため,葉枯症の初期ストレスに鋭敏に応答し,葉の障害程度とも対応することが前報で示されたACC(遊離と結合体の合量)を指標として,質量スペクトルデータを用いるNon-Target解析を実施した.その結果,フルクトースやグルコース以外に健全葉と発症葉間でわずかでも差の認められる成分として,GABA,トレハロース,ソルビトール,セロトニンなどが選抜された.それらの中で,トレハロース,ソルビトールおよびセロトニンは健全葉中では含有率が極めて低いが,発症に伴い顕著に増加していることから,葉枯症のストレスを特徴付ける上で重要な化合物と推察された.指標としたACCを含め,これら成分はいずれも組織の乾燥や水分ストレスによって集積することが報告されており,水稲の葉枯障害との関連性が強く示唆された.

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