子どもを主役にするためのワークショップの提案 : 金沢21世紀美術館での実践報告より

書誌事項

タイトル別名
  • コドモ オ シュヤク ニ スル タメ ノ ワークショップ ノ テイアン : カナザワ 21セイキ ビジュツカン デ ノ ジッセン ホウコク ヨリ
  • The Child in a Starring Role-A Workshop Proposal : From a Report of the 21st Century Museum of Contemporary Art, Kanazawa

この論文をさがす

抄録

type:text

社会的要請に応じた美術系ワークショップとは,学校教育支援,地域文化貢献,そして芸術環境の提供にある,との観点から考察を始めた.子どもを中心に据えて,それら3つに共通する重要事項を引き出して見ると,教育的要素を含む造形活動があげられる.そこで,教育的要素を含んだ美術系ワークショップの事例として,筆者らが金沢21世紀美術館で行った,「ねんどやきもの劇場」の実践報告をした.その事例を基に,ワークショップ参加体験から得られる子どもの成長と教育的効果について明確にすることを試みた.補強材料としたのは,事例から見られた子どもの行動(素材を通した遊びの行為とそのプロセス)である.そこから明らかになったことは,①共同制作を通し他者への意識が働くことで,協調性や自律性が養われ,社会性を身につけて行くこと.②造形活動の中で,言語表現を伴った独自の世界観が表出され,個性として育まれて行くこと.これらを踏まえ,子どもを主役にするためのワークショップの在り方を提案することが本稿の目的である.最終的に提案したこととは,子ども本来の遊びを考え出す能力が,充分に発揮できる活動環境の創出であった.言い換えれば,他者と遊びを共有しながら,自己表現できる態度を育んで行くための「素材,時間,場所」を整えると言ったことである.このようなことが,子どもを主役にするための活動環境であるとして,ワークショップ指導者へ向けての提案とした.本稿を通観すると,美術系ワークショップの本質は,子どもの発達段階に関わりながら,複合的な人間形成を支援することにある,と提示することができる.そして,子どもの人間形成を目的とした美術系ワークショップの実践は,社会の要請に応じた美術家の仕事であり,美術領域の取り組むべき責任であることを確認することになった.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ