「軽度」障害者のジレンマが語る日本社会における障害問題構造

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  • ケイド ショウガイシャ ノ ジレンマ ガ カタル ニホン シャカイ ニオケル ショウガイ モンダイ コウゾウ

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1「軽度」障害者のジレンマが問いかけるもの : 1960年代後半から展開されてきた、新しい社会運動としての障害者運動の息の長い取り組みを受けて、日本政府は、それまでの1970年制定の心身障害者対策基本法を改正し、1993年に、障害者基本法を制定した。障害者基本法での注目すべき改正点は、前身の対策基本法の第3条「すべての障害者は、個人の尊厳が重んじられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有するものとする」に、新たに第2項「すべての障害者は、社会を構成する一員として、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を与えられる」がつけ加えられたことである。改正の背景には、1990年代の政府の福祉基礎構造改革があり、また、1981年国際障害者年以降の障害者政策の進展があった。さらに、2004年には障害者基本法は再び改正され、第3条第1項の「処遇」を「生活」に変更すると共に、新たに「何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」という差別禁止条項が第3項として新たにつけ加えられた。しかしながら、この差別禁止条項を現実のものとするには、何が「障害」なのか、そして「障害を理由とした差別」とは何かが定義されなければ、法律を的確に動かすこと、また必要な法整備を進めるはできない。ところで、この1993年障害者基本法制定以降、障害者政策の策定、実施において、障害当事者の声をくみ取ることの重要性が認識されてきた。その一方で、近年、障害当事者のなかでも「軽度」障害者を自認する人びとから、「障害」のある人を、いわゆる「障害者」として十把ひとからげに取り扱うことの問題が提起されている[田垣、2002、2006:秋風、2008]。……

Journal

  • 人権問題研究

    人権問題研究 11 23-44, 2011-11

    大阪市立大学人権問題研究会

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