Arcata's Views Introduced in Jaina Treatises

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  • ジャイナ教論書に紹介されるアルチャタ説

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多くのジャイナ教論書に仏教論理学者たちの見解が紹介・引用されていることは周知の事実であるが,ダルマキールティの注釈者の一人であるアルチャタ(ca. 710-770)の見解もまた例外ではない.本稿は,ジャイナ教論書において「アルチャタ」という名前とともに引用あるいは紹介されているパッセージを収集し,彼自身の著作Hetubindutika(以下HBT)の所説との比較を通して両者のテキストの異同について考察することを目的としている.ジャイナ教論理学者がアルチャタの見解を引用する場合,一般的にはHBTのパッセージをリテラルに引用する場合が圧倒的に多いが,アナンタヴィールヤによるSiddhiviniscayatika(以下SVinT)においては,例外的にHBTからのリテラルな引用とそうでないものが混在しており,アルチャタという名前を伴ってその説が引用されていながらも,そのパッセージがHBTに見いだせない例も多く存在している.当該テキストを比較した結果,アナンタヴィールヤは,HBやHBTの記述を参考にしつつも,要約したり言い換えたりしながら,アルチャタの見解を再構築して紹介している可能性が高いことが明らかになった.アルチャタの失われた著作からの引用であることも考えられるが,その可能性はそれ程高くないであろう.しかしながら,SVinTに見られる「アルチャタ説」の中にはHBTの記述内容と異なるものも含まれているため,アナンタヴィールヤがHBTのみならず,アルチャタの他の著作を参照していた可能性は残る.そしてSVinTにおいて紹介される「アルチャタ説」の多くは,HBTには見られない見解として注目されるべきである.そこでは,HBTで行われていた複雑で難解な議論が明快かつ簡潔な形で紹介されていることも多く,アルチャタの思想を新たな観点から理解しようとする際に資するところが大きい.

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