カンボジアのイネ在来品種と改良品種における遺伝的多様性の評価

  • Chhourn Orn
    神戸大学大学院農学研究科 Cambodian Agricultural Research and Development Institute, Phnom penh Cambodia
  • 石川 亮
    神戸大学大学院農学研究科
  • Sophany Sakhan
    Cambodian Agricultural Research and Development Institute, Phnom penh Cambodia
  • Makara Ouk
    Cambodian Agricultural Research and Development Institute, Phnom penh Cambodia
  • 石井 尊生
    神戸大学大学院農学研究科

書誌事項

タイトル別名
  • Evaluation of genetic variation among rice local and modern varieties in Cambodia

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抄録

カンボジアのイネ品種における遺伝的多様性の評価を276系統の在来品種ならびに60系統の改良品種を用いて行った.在来品種は50年以上前に収集されたもので,"floating rice(浮稲)","rice in dry regions(乾燥地稲)","non-glutinous rice(粳稲)","glutinous rice(糯稲)"の4つに分類されている.また,改良品種は国内で育成された35系統および外国から導入された25系統からなる.これらよりDNAサンプルを抽出し,12対の染色体にそれぞれ座乗する12個のSSRマーカーを用いて解析を行った.まず,遺伝子多様度の値に基づき在来品種分類群内における遺伝的多様性を調べたところ,それぞれほぼ同じレベルの変異がみられ,在来品種276系統全体における遺伝子多様度は0.55であった.一方,国内で育成された改良品種35系統を用いて調べたところ,遺伝子多様度は0.46というやや低めの値が得られた.このようにカンボジアで育成された改良品種の遺伝的多様性が在来品種より減少したことは,近代の植物育種法の導入とこれまでの社会状況の変化によるものと考えられた.しかし,外国から導入された25系統を含めた,改良品種60系統全体における遺伝子多様度は0.61であった.このことは,現在カンボジアで栽培されている改良品種は,国内育成品種と外国導入品種を混在させることによって高い遺伝的多様性が維持されていることを示すものである.カンボジアで育成された4つの在来品種分類群と国内改良品種における分化の程度をNei の遺伝的距離に基づき調査したところ,0.09という一番低い値が"non-glutinous rice"と国内改良品種の間で検出された.この結果は,国内改良品種が主に在来品種の"non-glutinous rice"グループから育成されたことを示唆するものであった.また"floating rice"と他の4群の間では,0.32-0.51という高い値が観察され,深水生態環境が"floating rice"の独特な遺伝的分化に大きく影響したことが示唆された.

収録刊行物

  • 作物研究

    作物研究 59 (0), 37-41, 2014

    近畿作物・育種研究会

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