秘事伝承とその成長 : 『伊勢物語』の周辺(<特集>古代文学における<風聞>)

• 土方 洋一

  青山学院大学

書誌事項

タイトル別名

• The Growth of the Rumor over a Love Affair(<Special Issue>Rumors in Ancient Literature)
• 秘事伝承とその成長--『伊勢物語』の周辺
• ヒジ デンショウ ト ソノ セイチョウ イセ モノガタリ ノ シュウヘン

抄録

伊勢の斎宮寮において在原業平と斎宮とが密通したという伝承は、もともと創作された話であり、フィクションであることを前提として記憶されていたと考えられるが、時代が下ると、一部においてこの出来事が事実として取りなされ、二人の間に産まれた男子が高階氏の嗣子となったという伝承を派生させることになる。高階氏の血筋に関わるこの伝承は、従来藤原行成の日記『権記』に初出すると考えられていたが、『権記』の問題の記事は後時に加筆されたものであり、この風聞自体はおそらく白河院政期頃に発生したものではないかと考える。この高階氏にまつわる伝承は、一つの伝承から新たな風聞が派生することの例として、また成立の事情と年代が異なる伝承が、文献の上では平準化され、その地層の違いが見えにくくなる例として、風聞の発生とその伝承の過程を考える上で興味深い問題を提示している。

収録刊行物

• 日本文学

  日本文学 56 (5), 30-37, 2007

  日本文学協会

詳細情報

• CRID: 1390282680754604160
• NII論文ID: 110009885771
• NII書誌ID: AN00197092
• DOI: 10.20620/nihonbungaku.56.5_30
• ISSN: 24241202
• ISSN: 03869903
• NDL書誌ID: 8824363
• Web Site: https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I8824363
• 本文言語コード: ja
• データソース種別:
  • JaLC
  • NDL
  • CiNii Articles
• 抄録ライセンスフラグ: 使用不可