ベトナム戦争の現実と架空 : 大江健三郎「生け贄男は必要か」

• 宋 仁善

  筑波大学大学院

書誌事項

タイトル別名

• Reality and Fiction of the Vietnam War : Kenzaburo Oe's "Ikenie-otoko-ha-hitsuyoka"
• ベトナム センソウ ノ ゲンジツ ト カクウ オオエ ケンザブロウ イケニエ オトコ ワ ヒツヨウ カ

抄録

「生け贄男は必要か」は、ベトナム戦争をめぐる同時代の状況に密接に関わる作品である。作中、玩具爆弾の寓意的な仕掛け、狂気じみた「善」という人物の両義的な設定には、当時日本の兵器輸出の黒幕を暴こうとする作者の戦略が作用している。人肉食と生け贄の神話的なモチーフは、反復される戦争と復興の惨めなシステムへの諷刺である。日本帝国に取って代わったアメリカ帝国のあべこべな状況、反戦と特需が共存する同時代の自家撞着など、判然としないこの時期の全体像を提示するために、大江はこの作品でメニッポス的諷刺の方法論を援用している。

収録刊行物

• 日本文学

  日本文学 55 (9), 54-63, 2006

  日本文学協会

詳細情報

• CRID: 1390001205778657664
• NII論文ID: 110009886136
• NII書誌ID: AN00197092
• DOI: 10.20620/nihonbungaku.55.9_54
• ISSN: 24241202
• ISSN: 03869903
• NDL書誌ID: 8090693
• Web Site: https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I8090693
• 本文言語コード: ja
• データソース種別:
  • JaLC
  • NDL
  • CiNii Articles
• 抄録ライセンスフラグ: 使用不可