<断絶>と<連続>のせめぎ合い : 太宰治『パンドラの匣』論

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タイトル別名
  • Paralleling Closure and Continuity : A Study of Dazai Osamu's Pandora no hako
  • 〈断絶〉と〈連続〉のせめぎ合い : 太宰治『パンドラの匣』論
  • 〈 ダンゼツ 〉 ト 〈 レンゾク 〉 ノ セメギアイ : ダザイチ 『 パンドラ ノ コウ 』 ロン

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抄録

太宰治の『パンドラの匣』は、一九四五年一〇月二二日から翌年一月七日にかけて「河北新報」に連載された。連載の期間は、初期占領改革が行われる一方で、天皇制の維持、即ち象徴天皇制の成立への道を露呈する時期であった。まさに戦中から戦後へ、軍国主義の<断絶>と天皇制の<連続>の運動が同時進行しているこの時期、『パンドラの匣』は、「健康道場」というフィクショナルな空間を創造し、「玉音放送」が流れた一九四五年八月一五日を<断絶>として受け入れる青年に対して、戦後日本の思想を「天皇陛下万歳!」という叫びに求める<連続>の主張を突きつける様相を描いている。本稿では『パンドラの匣』における<断絶>と<連続>のせめぎ合いを同時代において捉え直すことで、その批評性を問う。その際、手紙の形式に注目し、共通の記憶を呼び起こす「あの」という空白の記号に日付という装置が加えられ、様々な同時代の文脈が喚起される過程を明らかにする。

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