社会的不適の典型としての「精神薄弱」と新興諸科学の役割--20世紀初頭アメリカ合衆国の優生学運動との関連 <Original Articles>Feeble-Mindedness as a Modele of Social Unfitness Raised by Newly Emerging Sciences and Eugenics at the Beginning of 20th Century America

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抄録

障害者の教育と生活は、諸科学の知見により規定される側面がある。歴史上、諸科学によりその生活と教育が最も翻弄されたのは精神薄弱の範疇に位置づけられた人々であった。本研究では、1910年代のアメリカ合衆国における優生学運動を発展させた諸科学のうち、自然科学的知見に依拠した新興諸科学であり、精神薄弱者の生活の在り方に関係した領域である社会学・社会事業、心理学、精神医学が提起した社会的不適論およびその典型としての精神薄弱の範疇化と優生学との関係について、その理由と動機、精神薄弱と対極にあった理想的人間像、社会的認識を中心に検討した。1910年代のアメリカの精神薄弱学説は基本的には家系説と社会的脅威論から構成されたが、生活実態としてはそれに反する事実が明示され始める時期であった。新興諸科学は、20世紀初頭には精神薄弱問題の社会的重要性を高めることに貢献したが、同時に、相互には共存・拮抗関係をもちつつ、科学としての自律性の確立と社会的認知を緊要な課題としてもいた。それゆえ、新しい技術を開発し、それを実地化して、各領域の社会的存在意義をアピールした。また、諸科学は、アメリカの国家としての国際的競争という社会的現実を意識して、それに勝利するためのアメリカ民主制社会の理想的市民像とそれを阻害する対極として精神薄弱を設定したのである。かくして精神薄弱は発生を防止されるべき存在となった。この時期に展開しはじめた新しい人間観や専門技術は普遍化されず、社会的効用の違いによって二元的に利用され、精神薄弱はその適用から除外されることになった。

収録刊行物

  • 心身障害学研究

    心身障害学研究 25, 49-65, 2001-03

    筑波大学心身障害学系

各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    120000843736
  • NII書誌ID(NCID)
    AN00121658
  • 本文言語コード
    JPN
  • 資料種別
    Departmental Bulletin Paper
  • 雑誌種別
    大学紀要
  • ISSN
    02851318
  • NDL 記事登録ID
    5718220
  • NDL 雑誌分類
    ZF1(教育)
  • NDL 請求記号
    Z7-1307
  • データ提供元
    NDL  IR 
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