学校五日制が児童生徒の疲労に及ぼす影響について

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タイトル別名
  • The effect of the 5-days/w-lesson-school on a tired feeling of children

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抄録

type:text

本研究は、学校五日制が児童生徒の疲労にどのように影響するかについて明らかにすることを目的とした。文部省の学校五日制のための調査研究協力校である愛知県下郡部に位置する足助小学校、足助中学校を実験校とし、名古屋市内の1小学校1中学校を対照校とし、それぞれの児童生徒を対象に、1990、1991年の2年にわたって、疲労自覚症状調査を実施し、比較検討した。〔小学校について〕1)疲労自覚症状訴え項目数を全体的にみた場合、実験校対照校とも、2年目に大きな増減は認められなかった。2)しかし、疲労症状を分野別にみた場合、2年間であまり変化のみられなかった対照校に較べて、実験校の児童は、「眠けとだるさ」分野の平均訴え項目数が増加し(2.2→3.8項目)、逆に、「注意集中の困難」分野のそれが減少した(3.8→2.9項目)。3)具体的には、実験校は、<横になってねたい>及び<口の中がかわ<>の有訴率が約10%増加、逆に、<考えるのがめんどくさい>、<きちんとしていられない>及びくちょとしたことが思い出せない>の「注意集中の困難」分野の有訴率がすべて50%台から40%台に減少した。4)同様に、実験校の初年度では、「注意集中の困難」分野に最も多い項目数を訴えていたものが約5割と多かったが、2年目は、「眠けとだるさ」分野に6割以上のものが占めるという、疲労内容の大きな変化が認められた。一方、対照校では、両年度とも「眠けとだるさ」分野に占める割合が7、8割であり、大きな変化はみられなかった。〔中学校について〕1)実験校の疲労自覚症状訴え項目数は、全体としてみた場合、対照校と比較して、2年目に顕著に増加した。これを分野別平均訴え項目做でみた場合、「眠けとだるさ」分野が3.6から4.3項目に、「注意集中の困難」分野が1.9から2.6項目にと、ともに増加した。2)分野別にみた訴え上位項目の有訴率は、そのほとんどの項目において、対照校より実験校の方が高率となった。具体的に約10%以上有訴率が増した項目は、<ねむい>、<横になってねたい>、<考えるのがめんどくさい>及び<いらいらする>であった。3)3分野間で最も多くの疲労項目数を訴えていたものは、「眠けとだるさ」分野の約8割であり、この割合は実験校対照校とも、かつ、両年度とも差は認められなかった。4)2年目の実験校は、それぞれの分野において、訴え項目数が増加したものの割合が最も多かったのに対して、対照校では、逆に、3分野とも訴え項目数が減少したものの割合が最も多く、この相反する結果は統計的に有意な差とたった。以上、本調査での学校五日制試行が児童生徒の疲労自覚症状に及ぼす影響は、小学校児童については、量的には大きな変化は認められなかったが、質的には、いわゆる精神的疲労感を減少させ、モの分、身体的疲労感を増す方向にあり、また、中学校生徒については、質量ともに疲労感を増大させる結果を示した。しかし、この結果は、小中学校の学校種の違い、地域の特性、さらに大きくは、学校ごとに異なる学校五日制への取り組みの違いによって、著しく差が生じたものと考えられる。1992年9月以来、制度上、学校五日制は月1回実施に移され、今後どれ程まで拡大されていくのか定かではないが、制度面のみならず、各学校の対応も含めて、児童生徒並びに教職員の"健康"という視点での検討は緊要である。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1050282813414178944
  • NII論文ID
    120001794718
  • NII書誌ID
    AN00006944
  • ISSN
    02884712
  • Web Site
    http://hdl.handle.net/10424/2678
  • 本文言語コード
    ja
  • 資料種別
    departmental bulletin paper
  • データソース種別
    • IRDB
    • CiNii Articles

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