社会的表象作用による概念物象化過程に関する文書的素材を対象とした分析技法の理論的整備並びに実証的適用一阪神大震災時の記録資料を中心とした社会意識研究の試み一

抄録

1995年の阪神・淡路大震災において興隆をみた災害救援ボラソティア活動は、その後の日本社会に対して深甚な影響を与えた。政策担当者が、災害救援のみならず、福祉、国際交流、人権擁護、政策提言等々の広範な領域にわたって、市民の力としてのボラソティアの活用とその活性化を謳うようになったのは、もとより80年代以降のNGOの影響力拡大という動向もあったものの、直接的には阪神大震災を契機としてのことである。筆者は、阪神大震災の発災以来、直接被災地に身を置きボラソティア活動に参加することを通じて、この大きな変動過程を調査してきた。この調査活動を通じて、筆者は、災害救援活動に従事したボラソティア団体が直接残した、記録、資料名鑑類を収集してきた。これら集積した資料とあわせ、特に今回は、文書的な素材を対象に、社会心理学的な分析を試みた。すなわち、筆者が年来理論的研究に従事している、社会心理学における社会的構成主義の動向、具体的には社会的表象の理論に依拠して、災害救援ボラソティアという社会現象を、日本社会の変容過程のなかにおける、新しい社会的現実の構成過程として把握することを試みた。この試みは、同時に、社会的構成主義の考え方に基づいた具体的研究に関する、新しい内容分析技法の確立という側面をも含んだものである。

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