表現を理解するとはどういうことか

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タイトル別名
  • What does it mean to understand representations?
  • ヒョウゲン オ リカイスル トワ ドウイウ コト カ

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抄録

グライスの構想した言語理論は、〈永久機関の反例〉をうまく扱えないように思える。「私はついに永久機関の原理を解明した」という科学者の言明は私にとって十分に有意味であるが、グライスの理論が、発言の理解に必要だとして要求する認知的な〈効果〉、すなわち私の側での〈信念の形成〉をともなわないからである。それでは、この理論を洗練しつつ継承した、スペルベルとウィルソンの〈有意性理論〉は反例を捌くことができるのか。彼らはまず聞き手にとっての〈認知環境〉を、聞き手の有する〈想定〉から成るシステムであると規定する。さらに〈想定〉を〈明白さ〉という基準によって類別する。そして、ある発言を理解するためには、それが聞き手に〈明白な想定〉をもたらすという「効果」さえ生めば十分だという。しかし〈明白さ〉とは、発言内容が真ないし蓋然的に真である想定として聞き手が受容する場合の、その想定の性状にすぎない。これでは反例を退けられないのは明らかだろう。まして作り話や間接言語行為など、さまざまなポリフォニーの形態に対して有意性理論ではどうすることもできない。それらが字義的に真であることはないのだから。反例をうまく処理するには、むしろ発言の字義性と非字義性との特異な関係を再考すべきであろう。いっそう根本的には、グライスが示唆した〈認知的効果〉を、オースティンのいう〈理解〉の観点から捉え返すべきだろう。真の問題は身体機能としての〈理解〉なのである。

収録刊行物

  • 年報人間科学

    年報人間科学 16 1-20, 1995

    大阪大学人間科学部社会学・人間学・人類学研究室

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390572174053685760
  • NII論文ID
    120004842364
  • NII書誌ID
    AN0020011X
  • DOI
    10.18910/8173
  • HANDLE
    11094/8173
  • ISSN
    02865149
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • IRDB
    • CiNii Articles

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