「社会学的啓蒙」とは何か : N.ルーマンの時代診断と理論プログラムの接点から

DOI HANDLE Web Site オープンアクセス

書誌事項

タイトル別名
  • Was ist ,,Soziologische Aufklärung"? : Eine Betrachtung über Entscheidungsfähigkeit im Verhältnis zu Niklas Luhmanns Zeitdiagnose und seinem theoretischen Programm
  • シャカイガクテキ ケイモウ トワ ナニカ N ルーマン ノ ジダイ シンダン ト リロン プログラム ノ セッテン カラ
  • シャカイガクテキ ケイモウ トハ ナニ カ N ルーマン ノ ジダイ シンダン ト リロン プログラム ノ セッテン カラ

この論文をさがす

抄録

N ・ルーマンは教授就任演説で「社会学的啓蒙」を自分の研究のプログラムに据えた。それは、すべてに人が理性によって制度的媒介なしに正しい状態を作ることができるという前提に疑念を呈するものである。それは現代社会における判断力を問題にしている。前近代社会では伝統によって一元的に社会が規定されていたが、近代以降伝統からまずは経済によって、続いて専門知識の浸透によって切り離された。ギデンズは専門知識が日常に浸透したことが再起的な社会状態を引き起こしたというが、それでは半分である。ルーマンは近代以降の特徴を伝統の減少に代わり、システムへの信頼が形成され、システムが分化して、制度化されていく過程と見ている。単に伝統から切り離されるだけでなく、制度的な発達によって安定した行為が可能になった。また、ルーマンの社会システム論を理論的に見ると意味というメディアを用いてコミュニケーションが行われており、行為は意味に規定されている。システムの形成はその意味が一般化し、それを用いることがある特定の反応を受け手に起こさせる構造によってになわれる。それによって行為者の予期が制度化され、行為者の意志快定の条件となる。このように複雑な社会で行為者は社会的構造条件に規定されており、逆にそれを利用することで行為能力を伸ばしているのである。社会学は当初からそうした行為の社会条件を問題にしているということができる。

収録刊行物

  • 年報人間科学

    年報人間科学 21 333-349, 2000

    大阪大学人間科学部社会学・人間学・人類学研究室

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ