「ざわざわ」とした教室の背後の専門的意味 : ナラティブ探究から探る

HANDLE Web Site オープンアクセス

書誌事項

タイトル別名
  • Narrative inquiry in the 'noisy' classroom : What is it's professional meaning?
  • ザワザワ ト シタ キョウシツ ノ ハイゴ ノ センモンテキ イミ ナラティブ タンキュウ カラ サグル
  • 「ざわざわ」とした教室の背後の専門的意味--ナラティブ探求から探る

この論文をさがす

抄録

教師の専門性はある決まった理論や概念で一概に定義できるものではなく、教師個人の経験に基づき、実践を通して、「未完成の教師」として、生涯にわたって発達を遂げていくプロセスである。このような教師の専門性を研究し、その中身を理解するために、研究者は教師の実践的文脈に沿い、その中や背後にある教師のストーリー、及びそれに含まれている複雑で豊かな意味を理解しようとする研究姿勢を取らなければならない。本稿は、筆者が「ナラテイブ探求」(Narrative Inquiry)という質的手法を通して、一人の日本語教師(涼子さん)の「ざわざわ」とした授業をめぐるストーリーを探求し、その中に埋め込まれた涼子さんの日本語教師としての専門性を明らかにする。筆者は涼子さんの授業を参与観察したときに、「なぜ、涼子さんがざわざわとした授業を許せるのか」という疑問を持ち始めた。調査が進むにつれ、教師としての涼子さんの語学学習経験、及び、それに影響された彼女にとっての「教室」や「学び」の意味、そして、長年の経験を通して積み重なった彼女の「個人的実践知」を理解できるようになった。 また、涼子さんをとりまくまわりの日本語教育というコミュニティからの視線を感じつつも、彼女が目の前の学習者達に対する理解を大事にし、自分らしい実践を行なっていることが明らかになった。彼女が向き合う学習者達の実情を見極め、それに合う実践を行ない、さらに、それを適して日本語教師としての知識をどんどん培っていっていることが、「ざわざわ」とした授業の背後の涼子さんの日本語教師としての専門性であった。

収録刊行物

  • 阪大日本語研究

    阪大日本語研究 18 139-167, 2006-02

    大阪大学大学院文学研究科日本語学講座

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ