ビリー・ワイルダーの映画(3)

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  • ビリー ・ ワイルダー ノ エイガ(3)

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抄録

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本稿では『ねえ!キスしてよ』(Kiss Me,Stupid,1964年)を検討してみたい。ほかのワイルダー監督作に比較すると物語のスケールがかなり小さいこのフィルムは,一種の売春もしくは配偶者の交換が大きなテーマとなっているせいで公序良俗に反しているという批判を受け,興業的にもあまり成功しなかった。しかし,ここでもワイルダーは,冷静に考えると〈ありえない〉と思われる数々の設定を仕掛けておきながら物語をスムーズに展開し,打算と真実の感情が厳しくせめぎ合うドラマをみごとに展開し,ほかにないほろ苦い味のあるコメディーをつくり上げている。この映画はご覧になっている方が少ないと思われ,またのちの分析を理解しやすいものとするため,最初に全体のあらすじを提示したあとで細部を見ていきたい。

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