サラセミアのmicroRNA異常

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  • 梅村 創
    九州大学大学院医学研究院保健学部門検査技術科学分野
  • Svasti Saovaros
    Thalassemia Research Center, Institute of Molecular Biosciences, Mahidol Univewrsity : Associate Professor

書誌事項

タイトル別名
  • Dysregulation of microRNA in Thalassemia
  • サラセミア ノ microRNA イジョウ

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抄録

生体の働きは,遺伝子の発現によりタンパク質が合成されて支えられている.その異常を捉えることは,遺伝性疾患や後天的な遺伝子異常で引き起こされる腫瘍のみならず様々な病態を的確に診断し最適の治療法を選択できることを可能にした.さらに,多くの遺伝子の発現が細胞内や様々な体液中に存在するmicroRNA(miRNA)により調節されていることが明らかになってきた.miRNA は個体発生,細胞増殖・分化,アポトーシス,腫瘍化に関与していること,腫瘍や心血管疾患,代謝疾患などで病態特異的に変化していることが報告され,新世代のバイオマーカーや治療法として注目されている.サラセミア(地中海貧血)は全世界で罹患者が最も多い遺伝性疾患の一つであり,主に熱帯・亜熱帯地域に居住している人々が高率に罹患している先天性貧血である.毎年6 万人の重症型サラセミアの新生児が出生している.死産,流産が多い上に,出生しても重度の鉄過剰症,輸血依存性貧血となり熱帯・亜熱帯地域の国民の健康を著しく損ねている.サラセミアを代表とするヘモグロビンの合成や構造異常は,1970 年代に分子診断が導入されて臨床応用された初めての疾患であるが,治療は生涯にわたる赤血球輸血と鉄過剰症の予防のための徐鉄療法に依存しており,分子レベルの決定的な根治療法は未だ開発されるに至っていない.我々は過去10 年間,タイ国マヒドン大学などASEAN 諸国の大学との共同研究として,いわばアジア保健学の課題の一つであるサラセミアのmiRNA を解析し,新たなバイオマーカー・治療法の開発を試みてきた.本稿では,サラセミアを概説しmiRNA解析の有効性について紹介する.

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