台風撹乱が北方森林の生理・生態および生態系炭素動態へ及ぼす影響 : 北海道北部の森林で行われた台風模倣実験からえた知見

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タイトル別名
  • Transitional features of the ecosystem state and carbon dynamics after an episodic typhoon disturbance in a northern forest in Japan
  • タイフウ カクラン ガ ホッポウ シンリン ノ セイリ ・ セイタイ オヨビ セイタイケイ タンソ ドウタイ エ オヨボス エイキョウ : ホッカイドウ ホクブ ノ シンリン デ オコナワレタ タイフウ モホウ ジッケン カラ エタ チケン

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抄録

北海道北部の森林生態系が台風による撹乱をうけた状況を想定し, 撹乱以後の生態系および炭素動態の回復過程を定量的に評価することを目的とした撹乱操作実験が実施された. 本実験に際し, 遷移初期段階にあるダケカンバ二次林を対象に葉群の完全切除が実施された. 撹乱処理の結果, 葉群は撹乱以前の状態への回復の兆候を示すものの, 撹乱から3年経過した段階においても未だに完全な回復に至っていない. 一方で, 同一光条件下での個葉レベルの最大光合成速度は撹乱以前と比べて高まる傾向を示した. また, 撹乱による林冠構造の変化は林床の微気象環境を変化させ, 林床植生であるササの被度を高めた. 本結果から, 葉群撹乱による生態系炭素動態への影響として, 短期的には樹木の光合成機能が高まることで直後にみられる生産性の低下が補償されるが, 一方で長期的にはササの被度を増加させ遷移の進行を妨げることで炭素動態を大きく変化させる可能性のあることが考えられる. したがって, 今後の気候変化に伴い同域に強い勢力の台風が到来する頻度が高まると, 長期的にはササの優占度がさらに高まることで, 従来とは異なる植生状態やそれに伴う生態系炭素動態へ移行する可能性が示唆される.

収録刊行物

  • 低温科学

    低温科学 0073 21-29, 2015-03-31

    北海道大学低温科学研究所

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