小繋事件文庫:20世紀日本,岩手県における多数の入会裁判事件から大量比較分析に向かって

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  • ショウケイジケン ブンコ : 20セイキ ニホン,イワテケン ニ オケル タスウ ノ ニュウカイ サイバン ジケン カラ タイリョウ ヒカク ブンセキ ニ ムカッテ
  • On the Archives ”Kotsunagi-Jiken-Bunko” Aiming at a Comprehensive Regional Collection of Iriai Related Documents and Materials in Iwate District

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岩手県は,日本の東北部に位置する行政単位で,以下のような概要を持った地域である。(中略) 日本全体は森林率が高い。しかし,岩手県はさらに高い森林率を持っており,また,その海岸線は,700kmを超える。したがって,林業と漁業は岩手の最も重要な産業となっており,しかも,「入会(いりあい)」とよばれる伝統的な慣習が,農漁民の長い歴史の中で重要な役割を果たしてきており,彼らはそれを侵す者への抵抗と闘争も行ってきた。それにも拘わらず,こうした事実は,資料の散逸のため,残念ながら今日ほとんど忘れ去られている。 日本における入会の研究は,社会関係の歴史的発展に関する大局的分析の成果と日本の事情に関する特殊な性格付けに依拠して,それとの関連における入会関係の特徴付けと発展・変化の傾向を,どちらかといえば,多くの事例の中から共通する諸特徴を内的・帰納的に抽出するというよりは,外的・演繹的に捉え,その例証としていくつかの個別の入会事例の研究を添えるという形で多くなされてきた(川島武宜 1959-1968)。この方法は,それ自体としてはマルクス・ウェーバーといった古典的社会科学の体系的な理論に基づく応用であって,その限りでは基本的に正しく,十分な意義を持っており,また重要な成果をもたらしたといえるが,その検証という点では問題を残している。この理論は,「近代化」が進展するにつれて入会関係は消滅すると結論づけている。加えて,地域の包括的資料を得ることの困難さから,入会関係の検証のための事例の大量蒐集や,それらの大量比較分析に基づく全国的な特徴や発展傾向の抽出といった帰納的な手法はほとんど採られては来なかった2)。

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