近世王権の墓制とその歴史的脈絡

書誌事項

タイトル別名
  • The Tomb System of Early Modern Rulers and Its Historical Context

抄録

日本の近世における「王権」の墓制についてその歴史的な系譜と展開を示すことを 目的とする。特に天皇家,将軍家,大名家に視点を当て,支配者階級における造墓に 対する意識が,古墳時代以来改めて「象徴」として意識されたことを,墓の規模,構造, その変遷,宗教,思想などを通して捉えてみたい。具体的には,近世天皇家と将軍家 の墓の規模の比較検討をする。将軍家の墓制については,特に将軍が霊廟として祀ら れるが,その系譜は,中世禅宗における開山堂,昭堂の系譜にあることを類例など確 認しながら示した。さらに,将軍を中心とした実質的な権力下にあった構成員である 大名の墓制の実態と,造墓の背景となった,思想,宗教,政治的な関係について類例 を示しながら紹介した。結論的には,特に近世初期における大名家墓所造営において 遺骸を埋葬する場合,朱子『家禮』の葬制に則った埋葬が行われ,後の供養は仏教的 な様式に従ったことを指摘した。近世初期大名家墓所造営における儒教受容の一端を 先学の研究に導きられながら明らかにした。

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