スペインにおける有機農業と有機食品流通動向 : バレンシアの有機農業を事例に

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  • スペイン ニオケル ユウキ ノウギョウ ト ユウキ ショクヒン リュウツウ ドウコウ : バレンシア ノ ユウキ ノウギョウ オ ジレイ ニ
  • Organic Agriculture and Distribution Channels of Organic Food in Spain: A Case in Valencia

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抄録

スペインにおける有機農業は、近年急速に拡大し、ヨーロッパで最大面積を誇るようになってきたが、有機農産物の70%は主にEU域内へ輸出されている。輸出対応のために、有機農産物の販売では農協を通じた流通チャネルが形成され、EU基準に沿った有機認証が必要とされてきた。その一方で、スペイン国内での有機農産物流通チャネルは、有機専門店、自然食品店が主流であり、消費者へのチャネルは必ずしも太くなく、1人当たり有機農産物消費も少なかった.2000年代に入り、EUの農業環境政策の支援を受けた有機農業普及組織および有機認証組織が形成され、スペインにおける有機農業の急速な展開を支えてきたが、スペイン政府も有機農業の支援のために、国内消費者への理解促進、普及に努めた。そのような中で、近年消費者の安全志向、健康志向の高まりもあって、有機農産物への需要が高まり、有機農業者サイドでも国内市場向けの対応が見られるようになってきた。本稿ではバレンシア自治州を対象に、有機農業の普及、認証組織、有機農業の概要を明らかにした後、有機農産物の流通チャネル毎の事例を取り上げて、その特徴を明らかにする。輸出対応型農協の事例では、EUの有機認証のみならず、個別の認証も取得し、種々のサービス事業を行なっているが、収益性を確保するのが困難になっている。広域流通型の事例では、農業有限会社を設立し、国内市場対応に転換しつつあり、消費者との提携に基づく有機農産物販売を行っている。地場流通型の事例では、農協への出荷から農場での直接販売に転換し、有機認証をとりやめている。国内消費者向けの有機農産物流通チャネルの組織化が進めば、市場は拡大するものと見られる。

収録刊行物

  • 有機農業研究

    有機農業研究 4 (1・2), 67-78, 2012-01-01

    日本有機農業学会

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