宮崎駿と角野栄子、二つの『魔女の宅急便』 : 児童文学の成長物語が八〇年代ジブリ・アニメーションに与えた影響

書誌事項

タイトル別名
  • Two Versions of Kiki’s Delivery Services by Eiko Kadono and Hayao Miyazaki
  • ミヤザキ ハヤオ ト カクノエイコ 、 フタツ ノ 『 マジョ ノ タッキュウビン 』 : ジドウ ブンガク ノ セイナガモノガタリ ガ ハチ〇ネンダイ ジブリ ・ アニメーション ニ アタエタ エイキョウ

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抄録

キャラクターによるリミテッド・アニメーションから、日常に生きる人間らしい成長アニメーションへ。影響を受け続けた手塚治虫から宮崎駿はどのように卒業していくのか。七〇年代の手塚治虫的な、パターン化されたキャラクターが動くリミテッド・アニメーションの遍歴物語から、八〇年代の、等身大の少女が日常生活の中でリアルに動く成長物語へと、宮崎駿が脱皮していく過程を追いかけた。原作をどのように改変して成長物語が作られたかを分析。『ゲド戦記』の影響や、同時代の魔法少女アニメーションとの違いにも言及しながら、等身大の少女の〈成長〉を描いたところが、『魔女の宅急便』の面白さであると論じた。 また、本作は『風の谷のナウシカ』に次ぐ〈魔法もの〉だが、ナウシカと比べて、職業によって生計を立てるという経済的部分がキキには付け加えられており、ナウシカになかった〈一人で生きるための〉手段として仕事する責任感が強められている。そうした「生きる力」は、宮崎がスタジオジブリの監督を通じて描き続けたテーマである。神格化されていない等身大の人間が悩む姿は、当時大流行した『魔法の天使 クリィミーマミ』の悩む姿も参考に作られていると考えられる。

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