水稲直播栽培を活用した稲WCSの導入 : 奈井江町における事例 (特集 道内における水稲直播栽培)

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抄録

空知管内における水稲直播栽培は,(タコ足式など古いものを除けば)昭和60年に北海道農業試験場(現在の北農研センター)が乾田直播早期入水方式により美唄市の農家3戸で試作したのが始まりである。その後,昭和63年に美唄市で22名による研究会が設立され,乾田直播早期入水方式および湛水直播が普及(現在43戸,222ha),平成6年には前年の大冷害をきっかけとして,妹背牛町で3名により(主に湛水直播を中心とした)研究会が設立(現在46戸,233ha)された。その後,平成18年頃から泥炭地における業務用米「大地の星」の安定生産と法人化を目的として,岩見沢市で乾田乾籾は種による直播栽培が徐々に拡がり,平成21年のJAいわみざわ水稲直まき研究会発足をきっかけに,一気に面積が拡大した(現在102戸,450ha)。現在では,空知管内は直播作付面積1,120ha(うち乾田682ha,湛水438ha),直播栽培農家281戸(うち乾田154戸,湛水136戸)と,北海道全体の68.8%を占める全道最大の直播産地である(平成26年現在)。このように,空知管内においては美唄市を中心に南空知で先駆的に取り組まれ,次いで北空知では湛水直播,岩見沢で乾田直播が取り組まれてきたが,本稿では中空知の特徴的な事例を紹介する。中空知管内に位置する奈井江町は「北の魚沼」として高級ブランド米の産地化に向けて地域一丸となって取り組む純農村地帯である。この町の(普及活動)重点地域となっている高島地区には良食味米を作る上で障壁となる泥炭土が分布している。このため,ここでは,町内の他地区とは異なり,水稲を基幹に麦や大豆を導入した複合経営により規模拡大と転作作物の本作化を進めてきた水田地帯(平均水田面積16.3ha/戸,転作率42.3%)が拡がっている。この地区の特徴は大きく3つに分けられる。先ず,平成20年から基盤整備が進んでおり,透排水性は改善されつつあるものの,有効土層が浅く転作による畑作物の収量が伸び悩んでいる。とくに,戸別所得補償制度に移行してから数量払い(収量・品質に応じた加算)の割合が拡大し,適地適作を進める動きが加速していること。2つめに,この地域は高齢化の進む空知管内でもとくに担い手不足が深刻化しており,既存システムでの規模拡大は既に限界に達していること。3つめとして,町内酪農家の乳量がこの3年間で23.8%ダウンしており,その主因として(輸入飼料の高騰等を背景とした)粗飼料の供給不足があげられている。そこで普及センターの地域係は,田畑輪換の一品目として,水田でイネを作りながら経営所得安定対策を有利に活用できる稲発酵粗飼料(以下,稲WCSと表記)の重点地域への導入を提案し,これらの転作作物を異常気象下にも対応できる方法で栽培することにより,生産を安定化させる活動を支援してきた。そして,耕畜の連携により地域全体としての所得向上を目指しながら,後継者不足にも対応できる(この地域では新しい)農法を重点地域の後継者に導入することで,地域の将来へ明るい展望を示したいと考えた。

収録刊行物

  • 北農

    北農 82(1), 7-11, 2015-01

    北海道農事試驗場北農會

各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    120005865120
  • NII書誌ID(NCID)
    AN00348744
  • 本文言語コード
    JPN
  • 資料種別
    Journal Article
  • ISSN
    0018-3490
  • NDL 記事登録ID
    026063755
  • NDL 請求記号
    Z18-218
  • データ提供元
    NDL  IR 
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