中部日本におけるクリ菓子産業の地域的集積 : 小布施町と中津川市の比較

書誌事項

タイトル別名
  • チュウブ ニホン ニ オケル クリ ガシ サンギョウ ノ チイキテキ シュウセキ オブセマチ ト ナカツガワシ ノ ヒカク

この論文をさがす

抄録

本研究は,経済活動の広域化あるいはグローバル化が進行する中での産業立地のロカリティの問題を,クリ菓子産業に即して考察したものである.クリ菓子は,日本列島の長期に及ぶクリと人間との間に培われてきた多様なかかわり合いのうち,消費(食)の側面における最高度の発展形態と言える.わが国の菓子産業は第二次世界大戦後の都市型祉会の形成に伴い各地に急速に発展したが,クリ菓子の場合きわめてロカリティの強い産業として成長してきた.その典型的な事例として,長野県小布施町と岐阜県中津川市を取り上げ,クリ菓子メーカーの分布,創業年代,規模,商品名,および展開形式等について検討した.両地域の比較を通じて判明した一般的傾向,すなわちクリ菓子産業の集積という形で特異な立地展開を可能にしたダイナミズムは,以下のように要約できる.(1)対象地域におけるクリ菓子の製造は,19世紀初期,当時の交通の要衝地であり,かつクリの伝統的な生産地という基盤のもとで芽生え,明治以降の近代化の過程でクリ菓子の基本となる商品開発が進み,さらに戦後の経済成長期以降にクリ菓子に待化した産業立地が認められるようになった.(2)現在のクリ菓子産業は,地域の独自性を意識したメーカーの主体的な商品開発,当該地域の観光資源を活かした地域振興策,東京や名古屋の後背地としての位置的有利性の下での観光地化の進展,交通と情報の発展による製品の直販可能性の増大,国内および国外の主要クリ生産地との連携等,複合的な要因の下で成立している.

収録刊行物

  • 経済学季報

    経済学季報 59 (3), 27-58, 2010-01-20

    立正大学経済学会

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ