抄録
子ども達の確かな学力向上を掲げた新学習指導要領指針により,主要教科から外れる図画工作科・美術科の授業時間は削減の一途をたどる。この傾向は我が国のみならず,学校教育に於ける芸術科目の軽視についてはヨーロッパ諸国でも近年問題とされている事柄である。我が国に於いて,この科目の目的は,子どもが「感性を働かせ」,「つくりだす喜びを味わうこと」とされ,最終的には「豊かな情操を養うこと」であると明記されているにも関わらず,技術的に優れた作品を仕上げることこそがこの科目の絶対的な目的であると考える根強い誤解が一般的に蔓延している。このような「作品主義」の考えに影響を受け,科目本来の目的との狭間でその指導方法に悩む教諭も少なからず存在する。また,結果を求める風潮を察知し,表現活動そのものを楽しめない子どもが学年を上がるにつれて激増するのもこの科目の特徴のひとつである。このように,その指導方法や授業内容に多くの課題を抱え,そのあり方が問われる図画工作科・美術科であるが,「美術(美的表現)」というものが人類の黎明期から現在に至るまで,人間の本能,衝動ともいうべき根源的な活動のひとつであったことは揺るがしようのない事実でもある。本稿では「美術」というものの成り立ちについて,その根源的な位相に立ち返りながら造形表現活動を考察し,そこから美術教育へ反映すべき原点を探っていく。
収録刊行物
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- 子ども学論集
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子ども学論集 1 55-67, 2013-04-30
広島文化学園大学学芸学部子ども学科
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390296343170319616
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- NII論文ID
- 120006230316
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- ISSN
- 21878145
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- IRDB
- CiNii Articles
- KAKEN
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用可